先日、とある民事裁判のニュースに関する反応をインターネット掲示板で見ていたところ、気になることがありました。
 その裁判は、気の毒な事故で幼子を失った親が、その事故を起こした加害者に対して損害賠償を請求する訴訟を提起した、というものでした。
 で、掲示板に投稿されていたのはこういう内容でした。

「でも、訴えられた方は請求の棄却を求めているらしいよ。反省してないよね」

 いやいやいやいや。
 そういうわけではないのです。

 民事の裁判では、訴える側(原告)が裁判所に「こういう判決を出してほしい」ということを訴状に記載します。具体的には、「被告は原告に対して金1000万円を支払え、という判決を求める」などと記載します。
 これに対して、訴えられた側(被告)も「こういう判決を出してほしい」ということを答弁書に記載します。具体的には、「原告の請求を棄却する、という判決を求める」などと記載します。
 そして、この「原告の請求を棄却する、という判決を求める」という記載は、ある意味定型句のようなものとなっています。極端なことをいうと、全く争うつもりがないという場合でも、『とりあえず「原告の請求を棄却する、という判決を求める」と記載しておこう』くらいの感覚で書いたりします。
 特に損害賠償請求の裁判の場合は、事故が起きたことの責任は認めるけれども、慰謝料や逸失利益の損害額については争うというケースが考えられます。そのような場合にも、まずは「原告の請求を棄却する、という判決を求める」と記載し、その後で、事故等については争わないけれども慰謝料の金額についてはこういう理由で争うなどということを主張していきます。

 したがって、単に請求の棄却を求めたからといって反省していないなどというわけではありません。単に適正な損害額を裁判で決めたいという考えの場合もあるわけです。
 この点、ニュースでは「被告側は請求の棄却を求めて争う姿勢を示しました」などとしか報道されないためなのか、まるで訴えられた方が全面的に争っているかのような印象を受けてしまいます。
 しかしながら、「請求の棄却を求める」というのはほぼ定型句なので、そこだけを報道してもまったく意味がないのです。むしろ、「請求を認める」というような答弁がなされた場合の方がはるかにニュースバリューとしては高いでしょう(もっとも、そのような場合はそもそも示談で解決するので裁判になることはないでしょうが)。