弁護士が依頼者から提供される情報の捉え方

 ご相談やご依頼の際、相談者や依頼者から提供される情報を元に、アドバイスを考えたり、事件処理の方針を検討したりすることとなります。
 例えば、裁判になっている場合、裁判所に準備書面(当事者の主張を記載した書面)を提出するわけですが、その書面を作成する際も当然、依頼者からの情報や依頼者の話す事実関係を元に作成していくこととなります。

 ところで、弁護士にもいろいろなタイプがいます。
 書面を作成するときも、弁護士によっては「とりあえず書けるだけ書いたろ。もし何かあったらそんときに考えればええやろ」といった、ある意味楽観主義的な人もいます。
 当職の場合は、それとは真逆の保守派慎重派なので、「Aということを書くとする。そうすると相手方はBという反論をする可能性があるが、そうなると当方にとって不利なルートに進む恐れがある。そうするとBという反論をさせないために、AではなくCということを書いておいた方が良いだろう」などと先のことを考えながら書面を作成します。もちろん、AやCはどちらも依頼者の話している事実関係です。

 さて、ここで依頼者から聞いていたCという事実関係が、実はDだったということがあります。この場合、書面にCということを書いたことで、相手方から「いやいや、それはCではなくDなんやで。ほら、これが証拠やで。ほんでもって、Dってことは、Eという反論があるんやで」というように、思わぬ反論を受けて、かえってAと書いた場合よりもさらに不利なルートに進む場合もあり得ます。

 もちろん、ある程度の情報にブレが生じることは仕方のないことであり、当職もそのブレを見越した上で情報を把握するようにしています。人間であれば誰でも間違って記憶することだってありますよね。だって人間だもの。
 それゆえ、誤解を恐れずに言えば、弁護士は依頼者のことを信頼していますが、他方で、信頼しないように気を付けるようにもしています。

 要するに何が言いたいのかというと、こういうことです。

1 自分にとって有利だと思うことも、反対に不利だと思うことも、できる限り正確に伝えて欲しい。それをどのように使うか(書面に書くか書かないか)は弁護士が判断します。

2 弁護士は依頼者から提供された情報をもとに事件処理の方針を決めるので、もし情報が不確かなのであれば、きちんとその旨を伝えて欲しい。確実かそうでないかによっても、書面に書くか書かないか、もし書くとしてもどういう風に書くかが変わってきます。

 これは多分、私だけでなく他の弁護士も同じなのではないかと思います。
 弁護士に依頼したけど、弁護士との付き合い方がいまいちピンとこないという人は、このことを念頭に置いてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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