労働者問題で会社側が自衛するための保険

企業の顧問弁護士をしていると、「問題のある従業員を退職させることはできないか」というような相談を受けることがあります。
ただ、これに関していうと、日本では労働者保護の要請が非常に強くて簡単に解雇することができないというのが実情です。
そのため、適式な手続を踏んだ上で解雇したつもりでも、従業員から不当解雇だと訴えられる恐れがあります。
そういうケースに備えて、会社側で自衛するための保険があります。

それが、『雇用慣行賠償責任保険』です。

雇用慣行賠償責任保険は、解雇問題に限らず、パワハラやセクハラといった職場でのハラスメントなど、いわゆる労使問題に起因して会社が賠償せざるを得なくなった場合に、会社が支払わなければならなくなった費用を補償する保険です。
内容は保険会社によって異なりますが、一般的なところでいうと、賠償金や解決金だけでなく、弁護士費用についても補償されることが多いです。

不当解雇の問題になった場合、会社が従業員に解決金を支払って和解するケースがありますが、その金額としては従業員の給与の数ヶ月分とされることが多いです。
また、ハラスメント問題などで会社が賠償責任を負う場合、事案にもよりますが賠償金の金額は百万円単位になることもあります。
そのような問題が起きないように社内ガイドライン等を策定するのはもちろんですが、万一に備えて雇用慣行賠償責任保険に加入しておくことも、会社の安全管理として求められていくと思われます。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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