契約書の損害項目に弁護士費用を含める理由

裁判で慰謝料として「110万円」が認められたなどという報道がよくあります。
これについて、「110万円のうち、慰謝料は100万円で、残りの10万円は弁護士費用相当額という名目の賠償金として認められている」ということは、これまで何度かご紹介してきたとおりです。

さて、この「弁護士費用相当額」なる賠償金ですが、基本的には不法行為に基づく損害賠償請求の場合にしか認められておりません。
ただ、医療過誤や建築訴訟など特に専門性が高いと目されている裁判の場合には、不法行為に基づく損害賠償請求でなくても弁護士費用相当額の請求が認められるケースがあります。

そして、企業間の契約書で損害賠償条項に「合理的な弁護士費用を含む」という文言がある場合に、当該条項を根拠として弁護士費用を認める裁判例もあります。
そのためには、取引に関する契約書を作成する際に以下のような条項を入れておく必要があります。

【条項例】
甲又は乙が、本契約に違反して相手方に損害を与えたときは、相手方に対して当該損害の全て(特別損害、利益の逸失による損害、合理的な弁護士費用を含むがこれらに限られない。)を賠償するものとする。
(出典:「自由と正義」第72巻第13号54頁)

なお、これにより弁護士費用相当額が認められた場合でも、その金額は基本的には「1割程度」のようです。実際にかかった弁護士費用が認められるわけではないことは、不法行為に基づく損害賠償請求の場合の弁護士費用と同様です。

いずれにしろ、企業としては今回ご紹介したような条項を入れておくことによって、万一弁護士に依頼して訴訟をしなければならなくなったという場合にも、一定限度で弁護士費用を補填できる可能性が出てきますので、契約書を作成する際にはご留意頂くのが望ましいでしょう。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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