法人の役員登記を放置していた場合②~みなし解散

 前回のコラムで、「新しい役員登記をすることで一定年数が空いていることが法務局に発覚し、ほぼ自動的に法務局から検察庁に連絡がいって、裁判所が決定を下しているものと思われます」ということを書きました。
 それでは、そもそも役員登記をずっとしなければ法務局に発覚することはないのではないか、下手に役員登記をするよりも登記を放置した方が得をするのではないか、という疑問が生じてくるかもしれません。

 しかし、そのような法の抜け道はできません。
 というのも、最後に役員登記をしてから一定年数以上が経過している場合、法務省が職権で会社が解散したものとみなす登記をすることがあります。

 これにより会社の法人格が消滅します。
 したがって、役員登記を放置していた結果、いつのまにか会社自体がなくなっていた、ということになりかねないのです。

 ただし、これを意図的に進めるというケースがあります。
 例えば、会社の破産手続をする場合、弁護士費用は勿論のこと、裁判所に納付する予納金を用意する必要があります。
 この予納金ですが、札幌地方裁判所では基本的に負債額によって決められています。最低でも数十万円、負債が大きければ100万円を超えることもざらです。

 しかし、破産せざるを得ないような会社にとっては、それだけの現金を用意できないということもままあります。
 そのような場合、会社はあえて破産せずにそのまま放置し、一定年数(通常なら12年間)が経過して職権で解散登記がされるのを待つ、というスキームを取ることがあります。
 ただ、少なくとも12年間は会社が存続するため、代表者としてはその間は債権者からの通知や裁判等に対応する必要があります。
 ですので、可能な限り破産するための現金は残しておいた方が、債権者に長く迷惑をかけず、会社経営者としてもその後の対応が楽になります。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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