法律扶助と個人事業主の破産予納金

法テラスが「法律扶助川柳」なるものを募集してネット上ではプチ炎上しているそうです。千葉県弁護士会の会長も募集に対して呆れた旨のツイートをしていました。
プチ炎上の根底には、法律扶助が弁護士にとっては非常に使いづらい(むしろ利用しない方向のインセンティブしか働かない)制度となっていることがあるように思われます。
他方で、同じ頃に法テラスから「弁護士は積極的に法律扶助を使ってほしい」というファックスが届きました。
法テラスと弁護士の間の溝はなかなか埋まりそうにないなと思いました。

法律扶助は、法テラスが依頼者の弁護士費用を一旦立て替えて、依頼者が後で立替費用を分割で返済するという制度です。
基本的には収入が乏しい人のための制度で、主に利用されるのは債務整理や離婚事件の場合が多いと思います。

ところで、個人事業主が自己破産をする場合、管財事件となることが予想されます。
管財事件となることのネックの一つが「破産予納金」です。
管財事件では裁判所の選任した管財人が諸々の業務をした上で破産手続が終了するのですが、その管財人の報酬を予め破産する人が納める必要があります。
それが「破産予納金」で、金額は各裁判所の運用によりますが札幌地方裁判所では最低20万円となっています。

この破産予納金ですが、なぜかこれは基本的に法律扶助の対象からは外れています。
そのため、弁護士費用は法律扶助で用意できても、破産予納金は自分で用意しなければならないこととなります。
しかし、破産する人が20万円も貯めるというのはなかなか容易ではありません。
一応、依頼者が生活保護受給者の場合には破産予納金も法律扶助の対象となりますが、逆に生活保護受給者の場合は管財事件となるケースは多くないように思います。
まあそれでも、弁護士費用と破産用納金の両方を自力で用意しなければならないというのと比較すれば、弁護士費用だけでも法律扶助で用意できるのはまだマシなのかもしれませんが……。

ちなみに、いわゆるコロナ破産に対応するためか、一時期は破産予納金も法律扶助の対象となるという運用がされていました。
それも昨年8月頃までの申立てが対象なので今はもう終了してしまいましたが、破産予納金も法律扶助の対象とする必要性が高いことを、本当は法テラスも認識しているのではないかと思われます。
「法律扶助川柳」なるものにお金を使うくらいなら破産予納金も法律扶助で出して欲しい、という怨嗟の声がプチ炎上の一因となったことは想像に難くありません。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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