一度決めた婚姻費用や養育費の金額の変更

 別居中の夫婦であっても、夫婦である以上は法的にお互いに扶養義務を負います。これは、別居中の生活費を渡すということになり、法律では婚姻費用と呼ばれます。
 子のいる夫婦が離婚しても、夫婦関係は解消されても親子関係は解消されないので、子と別居していても親子である以上は法的に扶養義務を負います。これは、別居親が子と同居している親に子の養育費を渡すということになります。法律ではそのまま養育費と呼ばれます。

 婚姻費用や養育費の金額は、基本的にお互いの合意によって決まります。一般的には「月額2万円」などというように決めることが多いです。
 もしお互いの合意ができない場合、家庭裁判所で調停や審判という手続を行います。そのときは、お互いの年収に基づいて算定することが多く、裁判所ではそのための算定表が用意されています(昨年末に算定表が改訂されました)。

 一度決めた婚姻費用や養育費の金額を変更したいという場合、お互いが変更について合意すれば難しいことにはなりませんが、合意ができないときもあります。合意ができないとき、それでも金額を変更したいという場合は、家庭裁判所で調停や審判を行うこととなります。
 ただし、家庭裁判所で金額の変更が認められるためには、「事情の変更」が必要となります(民法880条)。
「事情の変更」とは、収入が大きく増減した場合や再婚した場合などが該当します。
 したがって、なんとなく生活が厳しくなってきたから変更したいというような場合は認められません。

 さて、この事情の変更ですが、最近の新型コロナウイルスの影響で収入が減少した場合も該当しうると考えられます。
 裁判所でどのように判断するかは事案の集積がまだなので不確定ではありますが、新型コロナウイルスの影響で退職したというような場合は、従前の傾向からしても金額の変更が認められやすいと考えられます。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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