裁判報道の見方 ~福原愛氏の不倫慰謝料裁判

福原愛氏が不倫相手の男性の元妻から慰謝料請求裁判をされているとの報道がありました。

福原氏の不倫報道については以前もこちらで触れたことがあります。

このとき、福原氏は不倫の事実を否定していましたが、証拠関係からすると不倫が認定される可能性が高いだろう、とご説明しておりました。
その後、どのような経緯があったのかはあまり報道を見かけなかったので知らなかったのですが、今回の報道によると、既に福原氏も不倫相手の男性も離婚していて、福原氏の購入した新居で同棲生活をしているのだとか。

さて、今回の報道では、不倫相手の男性Aさんの元妻B子さんが、福原氏に対して、今年の8月に提訴したとのことです。
請求内容は、不貞行為に対する精神的苦痛の慰謝料として300万円、離婚に対する精神的苦痛の慰謝料として500万円を含む、計1100万円だそうです。

300万円はいわゆる不倫慰謝料、500万円はいわゆる離婚慰謝料ということになりますが……。
一般的に言って、不倫慰謝料と離婚慰謝料の両方を請求できるということはありません。
離婚というのは不倫という不法行為によって発生した結果なので、離婚という結果も含めて不倫慰謝料の金額が決められるのが通例です。
例えば、交通事故にあって死亡したとします。その場合、車で轢かれたことによる傷害慰謝料と、殺されたという死亡慰謝料の2つが発生するのではなく、死亡という結果も含めた全体で慰謝料が決められます。
したがって、不倫慰謝料と離婚慰謝料の2つを請求するというのは、なんとも苦しいというのが率直なところです。

恐らく、B子さん(の代理人弁護士)としては、不倫慰謝料だと300万円を超えることは難しい、かといってその程度の金額では福原氏の資力からすると大したダメージにならない、そこで何とか請求額を上げられないかと検討した結果、苦肉の策として離婚慰謝料を追加したというところではないかと思われます。
この離婚慰謝料ですが、一応、B子さん側が法的根拠としたのだろうと推察される判例があります。
こちらです。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88422

これは不倫相手に離婚慰謝料を請求した事例ですが、最高裁は、「単に不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」として、請求を認めませんでした。
これは、裏を返せば、夫婦関係を積極的に破綻させることを企図していたという事情があれば、不貞相手に対する離婚慰謝料の請求が認められ得ると解されます。
実際、報道によれば、B子さんは訴状において、「被告は、原告からAを略奪し、再婚することを画策し、実際に離婚が成立した。しかも、被告はお泊りデートが発覚し、Aが既婚者であることが大々的に報道され、社会的に非難されたにもかかわらず、これを認識しながらもAと原告とを離婚させた」と主張しているようです。このような主張は、上記判例を意識していることを伺わせます。
しかし、上記判例は、もともと不倫慰謝料の請求が時効にかかってしまってできなくなってしまい、仕方なく不倫慰謝料ではなく離婚慰謝料という方式で請求したというものでした。したがって、そもそも不倫慰謝料と離婚慰謝料の両立を認めたものではありません。
やはり、不倫慰謝料と離婚慰謝料の両方を請求するというのは、かなり厳しいものがあると感じます。

そもそもB子さんはAさんと離婚する際に相当額の慰謝料を受け取らなかったのか、というのも気になるポイントです。
もし受け取っていたのであれば、今回の裁判で認められる慰謝料もかなり減額されることになります。

今回の報道のタイミングとしては裁判期日が1~2回開かれた頃合いになりますが、B子さんの請求に対して福原氏が徹底的に争う姿勢を示しているのかなと推測されます。
恐らく和解で相当額を福原氏が支払うというようなことにはならず、判決まで進むのではないでしょうか。
そして、判決ではB子さんの請求額は大幅に減額されるのだろうと予想されます。

※以上は報道された内容を前提として検討したものです。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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