戸籍の広域交付を利用してみた(体験レポート)
1 戸籍の広域交付とは
戸籍の広域交付という制度が令和6年3月1日より始まりました。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
どういう制度なのか簡単にいうと、
これまでは本籍地が遠方の場合は郵送等で取寄せをしなければならず大変だったのが、最寄りの役所で全国の戸籍の取寄せができるようになった。
自分の戸籍だけでなく、相続に必要な被相続人の戸籍などを一式まとめて取り寄せることができるようになった。
というものです。
これまで相続手続で戸籍資料が必要となった場合、まず自分の戸籍を取り寄せ、そこから被相続人の戸籍まで順にたどっていき、その都度、遠方の役所に郵送で申請して取り寄せるなど、はっきり言って手間も時間もかかっていました。
それが、この広域交付という制度を利用すれば、最寄りの役所で必要な戸籍が全てまとめて取り寄せることができるということで、まさに夢のようなシステムができたといっても過言ではないでしょう。
しかし、この戸籍の広域交付ですが、代理人による申請はできません。
弁護士や司法書士が依頼者の代理人となって申請することができないので、業務としては使えない制度という認識でした。
それにまだ始まったばかりの新しい制度のため、実際に利用しているという人も聞いたことがありません。
そのため、当職も戸籍の広域交付がどれだけ便利なのか、実感としてはよく分からないというのが正直なところでした。
そんな折、たまたまプライベートで当職の祖父の相続用の戸籍資料が必要となったので、これを機に自分で広域交付を申請してみることにしました。
2 実際に広域交付を申請してみた

そんなわけで僕はほいほいと大通証明サービスコーナーにやってきたのだ。
ここは大通駅の地下街の一画にあってアクセスに非常に便利なのだ。
さっそく中に入って記入台に向かったけれど、記入台に備え付けの書式には広域交付用のものと思われる用紙がなかったのだ。
そこで受付の人に広域交付を申請したいと話したら、それ用の書式を渡してくれたのだ。
なので広域交付を利用したいときは受付の人に直接申し出るのだ。
ちなみに大通証明サービスコーナーでの広域交付の受付は平日の午前9時から午後5時までなので注意するのだ。
受付の人と話して分かったのが、取り寄せる戸籍を特定する必要があるということなのだ。
僕はてっきり、「この人の相続に必要な戸籍一式をください」と言えば自動的に全部揃えてもられるものだと思っていたのだ。
でもそうではなくて、「誰それの出生から死亡までの戸籍」というように具体的に範囲を特定する必要があったのだ。
これは広域交付が別に相続手続のためだけにできたというわけではないことが理由だと思うのだ。
だから相続に必要な戸籍の範囲をあらかじめ自分で調べておく必要があるのだ。
ちなみに僕は相続関係図と必要な戸籍の本籍地・筆頭者を記載したメモ書きを用意していたのだ。
そうしたら受付の人がコピーを取っていったので、そういう資料があると申請がスムースになるかもしれないのだ。
受付が終了すると、取り寄せには1週間前後の時間がかかること、完了したら電話で連絡するので受け取りに来て欲しいこと、などの説明があったのだ。
今回取り寄せる戸籍は本籍地が関東なので、まあ取り寄せに1週間くらいはかかるだろうというのも納得なのだ。
そうしたら翌日の昼過ぎに電話があり、もう揃ったのでいつでも取りに来て良いと言われたのだ。
これには早すぎて僕もびっくりしたのだ。
さっそく大通証明サービスコーナーに行くと、受付ではなく証明書の交付窓口の方に行けと言われたのだ。
特に交付番号はないので窓口に直接行って「広域交付を申請した者です」と説明したら、戸籍をまとめて渡されて手数料を支払ってミッションコンプリートなのだ。
3 利用して分かったこと
実際に広域交付を利用してみたレポートは以上のとおりです。
完走した感想ですが、「いや、めっちゃ早いな」というのが率直な所感です。
正直、弁護士の業務上でも、これからは依頼者本人に広域交付で取り寄せてもらった方がいいんじゃないかと思ったりもしました。
また、関東の戸籍が翌日に札幌で用意できたことから、「さては電子的な感じで本籍地の役所ではなく札幌で発行した戸籍だな?」と思って戸籍の発行者のところを見たら、次のように書いてありました。
「これは、本籍地の戸籍に記録されている事項の全部を証明した書面である。(戸籍法第120条の2第1項)」
そして、札幌市中央区長の記名捺印がされていました。
通常の戸籍だと「これは、戸籍に記録されている事項の全部を証明した書面である」という文言となっていて、本籍地のある役所の長の記名捺印があります。
このような違いから、戸籍の広域交付では電子情報化された戸籍情報を取り寄せて発行するというような感じになっていることが分かりました。