映画に見る法律事務所のイメージ
バラエティやニュースなどのテレビ番組に弁護士が登場することが増えてきたこともあってか、昔のように弁護士に対して「堅苦しい」というイメージは大分薄れてきたように思います。
では、法律事務所についてはどうでしょう?
法律事務所は、いうまでもなく弁護士が仕事をするに際して勤務している場所です。
弁護士に対するイメージは柔らかくなっても、法律事務所に対しては何となく気が引けるようなイメージがあるのではないかと気になってきました(そもそもあまり行きたくなるような場所ではありませんし)。
そこで、2つの映画に登場する法律事務所を見てみましょう。
まず1本目はこちら。
『探偵はBARにいる』
大泉洋主演なので、道民であれば知らない者はあんまりいないと思われます。
この映画の中で、暴力団とつるんだ悪徳弁護士が登場するのですが、その法律事務所というのが、①事務所は大通ビッセの中にあり、②弁護士の執務室は「オープンテラスか!」と突っ込みたくなるくらい広々としており、③机の上に爬虫類(イグアナ?)を放し飼いにしている、というものでした。
①は、まあ、ありえるかもしれません。まだ大通ビッセのビルに事務所を構える法律事務所はないようですが。
②は、日本中のどこを探しても法律事務所であのような執務室はないでしょう。さらにいうと、あれほどの執務室があればそれなりの応接間(相談室)もあると思われるのに、一見のお客を執務室で応対するというのも不自然です。
③は、ペットを放し飼いにするというのがあり得ないです。というのも、ペットが事件記録を汚したり破損したりする可能性があるからです。執務室に置くとしたらせいぜい観葉植物くらいじゃないでしょうか。
というわけで、『探偵はBARにいる』に登場した法律事務所は、一言でいえば「浮世離れしている」としかいいようのないものでした。
さて、もうひとつの映画を見てみましょう。
『ステキな金縛り』
これは、弁護士が主人公で物語も刑事裁判を主軸としており、主人公の勤務先の法律事務所が登場します。
で、これに登場する主人公の勤務先の法律事務所を見ていると、事務所の受付、弁護士の執務室、秘書・パラリーガルの執務スペース(ほんの少しだけ映ります)がどれもリアルだなあ、というか現実の法律事務所で撮影したんだろうなあ、多分四大事務所のどこかだろうなあなどと思っていたら、スタッフロールで撮影協力に「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」の名称が出てきたので合点がいきました(同事務所は四大事務所の一つです)。
ただ、法律事務所の内装等は現実的なのですが、どうしても非現実的としか思えない点がありました。それは、あれくらいの事務所を構える法律事務所では、基本的に刑事弁護の業務はしていない(少なくとも映画で描かれているように刑事弁護に力を入れてはいない)ということです。というのも、四大事務所は渉外案件や企業法務を主たる業務としているのであって、映画のように刑事弁護に時間をかけていると、資金的にあれほどの事務所を維持することはまず不可能だからです。
ということで、『ステキな金縛り』に登場した法律事務所は、内装としてはリアルだけれども、そこで描かれる弁護士の業務との兼ね合いで見ると「現実離れしている」というものでした。
とまあ、まるで重箱の隅をつつくようなことを言っておりますが、もちろん、映画に登場する法律事務所は、見栄えの良さも考慮した“セット”だということは重々承知しています。
しかし、なんとなく世間的には「法律事務所は豪華な場所だ」というイメージがあるのではないかと思います。
いや、全然そんなことないですよ。
むしろ大多数の法律事務所はそもそも内装にあまり気を使っていないのではないかと思います。
イメージとしては、地元にある不動産業者の事務所が一番近いのではないかな。
ちなみに、私が独立するに当たり事務所を現在のビルに決めた理由は、何を隠そう「トイレが綺麗だったから」です。
映画のように執務スペースをお見せすることはできませんが(守秘義務のある事件記録が置いてあるため)、どうぞ気楽な心持でご来所頂ければ幸いです。