弁護士から通知書が届いたときに最低限気を付けるべきこと

 「弁護士からの通知書」といったキーワードで検索をして当事務所のサイトに来られる方がおられます。

 弁護士から通知書が届いた場合、気をつけるべき点は2つです。

 まず1つ目は、そのまま放置しておいたら裁判手続になる可能性が高いことです。
 弁護士名義で通知書を出すということは、基本的には弁護士に事件処理を依頼している状態です。そうすると、依頼された弁護士としては、示談で解決できない場合には裁判手続に移行するということを念頭において事件処理を進めます。恐らく弁護士が送付するほぼすべての通知書に、「本書到達後2週間以内に何ら誠意あるご対応を頂けない場合にはやむをえず法的手続を取らせて頂きます」などといった文言が記載されていると思います。これは、ある意味、「何も回答がなければ直ぐに裁判するから、裁判された後で文句を言わないでよ」という趣旨を含んでいます。放っておいたらそのままフェードアウトするのではないか、などという淡い期待は、抱かない方が良いでしょう。
 したがって、何かしらの対応をした方が良いということになりますが、そこで気をつけるべき2つ目がでてきます。

 その2つ目というのは、弁護士とのやりとりは、後から巻き直すことができないものであること、さらに後の裁判手続で証拠となる可能性があること、です。
 弁護士から通知書が届いたことに驚いて、頭の中が整理されていないまま、法的知識もなしに連絡すると、自分の意図に反して回答を受けとめられたりすることがあります。例えば、自分ではAと話したつもりでも、法的には真逆のBとしか解釈のしようがない場合があります。
 また、自分では軽いつもりで発言した内容が、実は法的には大問題な内容であり、しかもそれが録音されていて、裁判になってから証拠として提出される、などということもないわけではありません。ちなみに、法律事務所の中には電話の通話内容は全て自動的に録音するようになっている事務所もあります。
 ご相談の中で一番困るのが、ある程度ご自分でやりとりをしてからご相談に来られるパターンです。このとき、自分では良かれと思ってやったことが、実は客観的に見ると非常に悪手であったということがあります。一度悪手を打ってしまうと、後から挽回するのが困難になるケースが多いですし、相談を受ける側としてもご提案できる道筋に制限が生じてしまいます。

 なにはともあれ、弁護士から通知書が届いたら、まずは弁護士に相談してみるのが最善手です。ここでいう弁護士は、もちろん、通知書を出した弁護士以外の弁護士です。

 ところで、通知書に期限が記されている場合があります。上記でいうところの「本書到達後2週間以内」ですね。
 この場合、もし2週間以内にどうしても弁護士に相談することができないときは、相手方には、「これから弁護士に相談するため回答はしばらく待って欲しい」という旨の一報だけ入れておくのがベターです。さらに、できれば「いつ頃までに回答する予定です」というのも報せておいた方がなお良いでしょう。
 通知書を送っている方も、2週間以内で回答できない場合もあるというのは当然に分かっています。ただ、何のリアクションもなければ、脈なしと判断して直ぐに裁判手続に移行する準備を始めますので、「話し合うつもりがありますよ」というアピールはしておいた方が無難です。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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