裁判報道の見方 ~同性婚に関する大阪地裁の判決

同性婚に関する新しい判決が大阪地裁でありました。
結論としては、違憲であるという原告の主張を認めず、請求棄却というものでした。

同性婚に関しては、令和3年3月に札幌地裁で判決が出ていました。
その時の紹介記事がこちらです。

http://kuzunohalo.blog.fc2.com/blog-entry-163.html

札幌地裁では、異性婚の場合に得られる法的利益の一部でも同性婚に保証しないのは憲法の平等原則違反である、と判示していました。
その後、同性婚の裁判が係属している他の裁判所でも同様の判断がなされるのかが主要なポイントでしたが、今回の大阪地裁では平等原則違反とまではいえないと判断しました。
まあ、そもそも憲法が異性婚しか想定しておらず同性婚については想定していなかったということ(憲法の明文上明らか)からすれば、憲法が同性婚について積極的に保護するものではないという結論は導き出しやすかったのだろうと思います。

法律相談などで「担当する裁判官次第で結論はどちらにもなり得る」という説明をすることがあります。
今回のような同性婚に関する判断はまさしくそれに該当します。もちろん同性婚を求める事情は人(原告)によってそれぞれだと思いますが、「同性婚を認めないことが違憲かどうか」というのは、原告側の事情によって決まるというよりは社会情勢によって決まると思われます。実際、判決文から推察する限り、専ら社会的歴史的な主張の是非が繰り広げられており、原告側の個人的な事情についてはほとんど触れられていません。
つまり、札幌地裁と大阪地裁とで、社会的歴史的な事情は同じであるにもかかわらず、担当する裁判官によって真逆の判断がなされたというわけです。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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