後出しの著作権料の請求に対して

 先日、札幌弁護士会で元文化庁著作権調査官の弁護士を講師に招いて著作権に関するセミナーが開催されました。
 その中で、講師の先生が四方山話のように話題にしたことが非常に気になりました。

 それは、ネット上に著作物をアップしておいて、社員がその著作物を無許可で利用している自治体等がないかを日々調査し、無断利用しているのが判明したら著作権料(相当額の損害賠償)を請求している会社がある、というものです。
 要するに、ネット上で無償で利用できる素材だと思ってダウンロードして使用したところ、実は有償利用だったといって損害賠償請求されるわけです。
 素材を利用した側としては、無償だと思って(無償だからこそ)利用したのに、後出しじゃんけんで利用料を請求されるようなもので、納得しづらい気持ちになります。

 実は、むかし当職の顧問先企業で、まさにこういった事例に出くわしたことがありました。
 社内広報誌にネットで探した画像を使用し、その広報誌を会社のホームページ上に掲載していたところ、数年後になって、当該画像の著作権を管理しているという会社から損害賠償請求通知が来たというものです。
 その時に同種事例がないかを調べたところ、いろんな自治体で同じようなケースが発生しているというニュースがいくつか見つかりました。
 それによると、幾らか支払っているケースが多く、裁判になったという事例もあれば、金額も場合によっては百万円単位になっているのもありました。

 顧問先企業としては、やはり請求には納得できない面はあるものの、法的には請求に理屈があるため、できる限り穏便に済ませたいということになりました。
 そこで、相手方に対しては、著作権による請求についてはあまりよく分からないが、早期解決するなら少額であれば解決金を支払うけど、どうでしょうか? というように、正面から取り合わずに早期に少額で解決することを打診する(ごり押しする)方針で進めることにしました。
 ただ、当職が代理人として交渉に出ると、さすがに弁護士なのに著作権についてあまりよく分かりませんというスタンスは取れません。
 そのため、あえて当職は代理人としては表には出ず、ただ相手方との交渉文書は当職が(顧問先企業の名義の文書で)作成し、相手方の請求をのらりくらりかわして、顧問先企業の妥協できる金額まで落とし込んで交渉を成立させました。

 正攻法ではない請求に対しては正攻法ではない対処の仕方があるというお話でした。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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