相手方が不倫を認めない場合の対処のポイント
配偶者の不倫が発覚したことが離婚のきっかけとなることがあります。
ところで、調停や裁判で不倫を理由として離婚を請求する場合に、もし相手方が不倫したことを認めないときは、請求する側で不倫の証拠を出す必要があります。
ここでは、相手方が不倫を認めない場合に、実務でどのように対処しているか、そのポイントを解説します。
不倫の証拠がない場合
まず、不倫の証拠が全くない場合は、どんなに怪しくても不倫があったと立証することはできません。
もちろん、相手方が不倫したことを認めるのであれば証拠は不要となります。
しかし、夫婦間の話合いでは不倫を認めていた場合でも、調停や裁判になると不利になるのを恐れて態度を変えて不倫を認めなくなることもあるので注意が必要です。
したがって、不倫の証拠がない場合、調停や裁判で不倫を前提とした交渉をすることは基本的に難しいです。
そういうときは、不倫以外に交渉のフックとなるものがないかを検討することになります。
証拠があるのに不倫を認めない場合
証拠の証明力が弱いケース
不倫の証拠といっても、興信所の報告書からメールやLINEなど、いろいろあります。
どのようなものでも証拠となり得ますが、問題は証拠の内容、すなわち証明力です。
証明力というのは、要するに不倫があったことを認定できるかどうかです。
言い換えれば、「言い逃れできる証拠か否か」という点が重要になります。
例えば、「深夜の人気のない公園の駐車場でカーセックスをしていた」証拠として、興信所が深夜に駐車している車の外観を撮影したとします。
しかし、車内で性交している様子まで撮影されていなかった場合、限りなく怪しいですが、駐車場の車内で性交するというのは(裁判所が認めるほど)一般的とは言い難いため、証明力としては弱い(=不倫が認められにくい)ということになります。
証拠の証明力が弱い場合には、別の証拠の収集をする必要があると考えておいた方が無難です。
証拠の証明力が強いケース
例えば、ホテルに2人で入るところと出てくるところを撮影した興信所の報告書は、一般的にホテルに男女2人で宿泊等すれば性交があったと認定するのが裁判所の経験則なので、証明力は強い(=不倫があったと認められる)ということになります。
ところが、明らかな証拠があるにもかかわらず不倫を認めようとしないケースもあります。
理由は様々ですが、一番の理由は恐らく、不倫をした者からの離婚請求は原則として認められない、というところにあるのでしょう。
つまり、不倫を認めてしまうと自分から離婚を請求するのが極めて難しくなるため、どうしても不倫はなかったということにしたいという思惑があるわけです。
証明力の強い証拠がある場合は、相手方が不倫を認めなかったとしても、調停や裁判では不倫があったと認められる可能性が高いので、さっさと調停や訴訟に進んだ方が早いです。
肝心なのは、相手方に不倫したと認めさせることではなく、裁判所に相手方が不倫したことを認めてもらうことです。
調停や訴訟であれば、仮に相手方が不倫を認めなかったとしても、基本的には不倫があったことを前提として交渉を進めることができます。
ただし、調停は最終的にお互いの合意が必要となるので、相手方が不倫を認めなければ訴訟に移行することになります。
まとめ
不倫の証拠が無い、あるいは証拠としては弱い場合、不倫があったことを前提として進めるのは基本的に難しいので、目的に応じて別の交渉材料を検討するのが望ましいです。
不倫の確たる証拠があるなら、仮に相手方が不倫を認めないとしても、相手方に不倫を認めさせることに拘るのではなく、むしろ相手方を放置して裁判所での手続を進めるくらいの方が有意義です。
なお、これまでの当職の実務経験上、不倫した方は、最初の段階で不倫を認めて真摯に謝罪をした方が、最終的にその後の話合いが円滑に進むことが多いように思います。
逆に言うと、不倫を認めずに碌な謝罪もしないというケースでは、そのような態度がネックとなって交渉がなかなか進まず、年単位で長期化することもあります。
当事務所の無料相談では、不倫の証拠が裁判でも使えるものかどうかを判断し、もし証明力が弱い場合にはどのような証拠があると良いか、などについてアドバイスしております。
不倫による離婚や慰謝料請求でお悩みの際はお気軽にご相談ください。