面会交流のポイント

子と別居している親が、子と会ったり手紙や電話でやりとりしたりして交流することを面会交流といいます。
かつて民法には面会交流に関する規定はありませんでしたが、家庭裁判所の実務上で民法766条の類推適用により「面接交渉権」として定着していました。
その後、平成23年の民法改正により民法766条で面会交流が明文化され、家庭裁判所の審判事項としても明記されました。
ここでは、面会交流に関する実務の運用等についてご説明します。

目次

直接的面会交流とは

直接的面会交流とは、子と別居親が実際に会って交流する方法です。

一般的には、子を受渡しする日時と場所を決め、同居親が連れ添うなどして子が待ち合わせ場所に行き、そこへ別居親が子を迎えに来て、一緒に食事等をして過ごした後、待合せ場所で子と別れ、子は迎えに来た同居親と帰宅するというのが多いです。

宿泊を伴う面会交流も直接的面会交流になります。

基本的に面会交流と言えば直接的面会交流のことを指します。

取り決めの内容としては、「同居親は、別居親に対して、別居親が子と月1回程度面会交流することを認める。面会の具体的日時、場所、方法等は子の福祉を尊重して、当事者間で協議して定める」として、日時場所等は都度、別居親と同居親が連絡し合って調整することとなります。

また、「毎月第三土曜日、午前10時から午後1時まで、子の受渡しはJR札幌駅の東口改札口で行う」といったように、具体的に日時や場所を特定して決める場合もあります。

日時場所等を予め特定しておけば、面会交流の都度スケジュール等の調整をする必要がなくなるので、面会交流が円滑に実施できるという利点があります。特に別居親からは、面会交流が本当に実施されるのか不安で、このような取り決めを求めることがあります。

他方で、子の体調や都合により日時を変更したいというような場合に柔軟に対応することができなくなる恐れがあり、子の福祉に反する結果を招く場合もあります。

間接的面会交流とは

間接的面会交流とは、子と別居親が手紙、ビデオ、写真の送付等で交流する方法です。

近時発展しているZOOMなどのテレビ電話や、チャットやLINEなどを利用したやり取りも間接的面会交流になります。

子が幼い場合は、同居親から別居親に対して子の写真等を送付するという方法で行われることもあります。

また、別居親から、クリスマスや子の誕生日などにプレゼントを送付するということも多いです。

取り決めの内容としては、「同居親は別居親に対し、毎月子の写真を送付する。同居親は別居親が子に手紙を送ることを妨げない」として、同居親から別居親へメール等で子の写真を送付するなどします。

第三者機関の利用

面会交流をサポートすることを目的とした施設があり、そのような施設のことを面会交流の実務では「第三者機関」と呼んでいます。

第三者機関では、面会交流に関する日程調整の連絡、実際の面会交流の場所の提供、面会交流時の付添サービスなどのサポートが受けられます。

直接的面会交流をしたいが、親同士で連絡を取るのが難しかったり、子だけで別居親に会うのが不安だという場合には、第三者機関を利用するという方法があります。

第三者機関は有料ですが、費用は別居親と同居親で折半して負担することが多いです。

ただ、民間の運営のため、必ずしもお住いの地域に第三者機関があるとは限りません。

札幌では以下の2施設があります。

「一般社団法人アイエムアイ」

http://menkai.chiiki-imi.org/

母体である社団法人が保育施設を運営しておりキッズルーム等の施設が充実しています。

「あやの会」

http://sapporo-oyako.org/

弁護士や家庭裁判所の元職員により運営されているため専門的な知見も交えたサポートを受けられます。

家庭裁判所での手続の流れ

別居親から同居親に対して、面会交流の実施を求めて調停を申し立てることができます。

また、離婚調停でも、離婚条件のひとつとして面会交流が問題となることがあります。その場合は、離婚調停の中で面会交流についても協議されます。

面会交流調停では、裁判所から最初に面会交流について説明した動画を視聴するよう求められます。

動画は以下の裁判所のサイトで視聴することができます。

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調停で面会交流が問題となる場合には、児童心理学等を履修した調査官という職員が関与することが一般的です。

調査官は調停に立ち会うだけでなく、当事者や子と面談したり、保育園や学校の担任から聴取したりなどの調査を行い、その調査結果に基づいて面会交流について意見を述べます。このときの調査内容や意見は調査官報告書として提出され、当事者はそれを閲覧謄写することができます。

また、調査官の調査の一環として、実際に直接的面会交流を実施して、子がどのような反応をするかを調査するという場合もあります。

このように一度別居親と子を会わせてみて子の様子を見たりすることを、実務では試行的面会交流といいます。

調停で協議しても面会交流について合意できないということもあります。

面会交流調停であれば、合意できずに調停が不成立となったら審判に移行して、裁判所が面会交流の内容を決定します。

他方、離婚調停であれば、調停が不成立となっても当然に訴訟には移行しません。当事者からの提訴によって訴訟に移行しない限り裁判所が面会交流の内容を決定することはなく、何も決まらない状態となります。

そのため、離婚よりもまず面会交流をしたいという別居親は、離婚調停が不成立になる可能性がある場合には、離婚調停とは別に面会交流調停を申し立てておく必要があります。

まとめ

面会交流は、少しでも早くそして少しでも長く子ども達と面会したいという別居親と、子ども達を会わせるのには不安があるしそもそも相手と連絡を取り合うこと自体が苦痛に感じるという同居親とで、感情的に対立が激しくなることが多いです。

そのような場合、弁護士や裁判所、第三者機関などを利用して、子にとっても有益になるような面会交流の方法を模索することが大切です。

きちんとしたルール作りをした上で面会交流を実施しないと、場合によっては未成年者略取罪に問われる恐れもあるので注意が必要です。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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