有責配偶者からの離婚請求訴訟に対して5ヵ月で解決金1000万円を獲得したケース

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事案の概要

Aさんは夫と25年前に結婚し、子どもが1人いました。

しかし、5年前から夫は不倫を始め、3年前に夫が家を出て別居生活が続いていました。

そして、夫から離婚調停が申し立てられましたが、Aさんが離婚を拒否したので調停は不成立となりました。

そうしたところ、夫から離婚と慰謝料200万円を請求する訴訟が提起されました。

Aさんは過去に不貞相手に対する慰謝料請求を当事務所にご依頼されていたので、再び当事務所に相談に来られました。

当事務所の強み

本件は不倫をした夫すなわち有責配偶者からの離婚請求です。

有責配偶者からの離婚請求が認められるためには次の3つの要件が必要といわれています。

・別居期間が同居期間に比して長期であること
・未成熟子がいないこと
・離婚することで配偶者が経済的苦境に陥らないこと

このうち「未成熟子がいないこと」については、子は成人して独立していたのでクリアされています。

「別居期間が同居期間に比して長期であること」について、同居期間が22年に対して別居期間が3年なので、長期であるとはいえません。

「離婚することで配偶者が経済的苦境に陥らないこと」について、この要件をクリアするためには有責配偶者から離婚に際して一定額を支払うことを提示するのが通例ですが、本件では逆に慰謝料200万円を請求しているくらいなので、クリアするつもりすらないように思われました。

そこで、以上について丁寧に論じて離婚請求は認められないとした答弁書を提出しました。

すると、第1回口頭弁論期日で、裁判官から次回期日に尋問を実施するという訴訟指揮がされました。

この段階で、裁判官が離婚請求を認めない心証であることが分かりました。

なぜ分かるかというと、夫からの請求内容が離婚と慰謝料200万円だからです。
もし離婚を認めるという場合、その次に慰謝料をいくら認めるのかという判断をしなければなりません。慰謝料をいくら認めるかの判断をするには、通常はもっと主張立証をさせるために審理を続行します。
しかし、裁判官がすぐに尋問するということは、訴状と答弁書以上の主張立証が必要ないこと、すなわち慰謝料について判断するつもりがないことを意味します。
そして、慰謝料について判断するつもりがないということは、離婚を認めないという心証であるということが分かるわけです。

以上のような裁判所の心証形成については、「平成17年度専門弁護士要請連続講座 家族法」(商事法務・東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編)の3~31ページに掲載されている阿部潤判事による「『離婚原因』について ―裁判実務における離婚請求権をめぐる攻防―」という論文を読むと分かります。

尋問を実施した後、裁判所で和解協議が行われました。

先に当方が個別に裁判官と協議しましたが、裁判官からは開口一番、「先生もお分かりかと思いますが、離婚請求は棄却です」と心証が開示されました。

その上で和解金としていくらなら離婚に応じられるかを確認されたので、Aさんとしては和解金は1000万円を希望する、それ以下になるなら離婚には絶対に応じないと説明しました。

その後で夫側が裁判官と個別に協議しましたが、夫側はてっきりすぐに尋問になったので離婚請求が認められるものと勘違いしていたらしく、今離婚に応じるなら手切金として100万円くらいは払っても良いというような態度だったようです。

解決結果

最終的に、どうしても離婚したい夫は1000万円の要求を受け入れざるをえなくなり、夫がAさんに和解金1000万円を支払って離婚するという和解が成立しました。

本件では当方から無益な反論をせず適切な答弁をしたことですぐに尋問まで進んだので、提訴から和解成立まで5か月で解決できました。

他の弁護士との違い

第1回口頭弁論期日で裁判官が尋問を実施すると言った時点で裁判官の心証を読み取れたかどうかで、その後の和解協議における立ち位置が大きく変わりました。

実際、本件で裁判官の心証を適切に読み取るには、離婚訴訟に関する豊富な経験と知識が必要だと思われます。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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