調停で弁護士に依頼するメリット

 先日、札幌家庭裁判所で2番目に長く続いていると言われた遺産分割調停が成立しました。私は相手方(調停を申し立てられた者)の代理人として関与していました。

 ところで、この「調停」という言葉、当事務所のホームページにも出てきますが、「裁判」と比べるとあまり馴染みがないかもしれません。
 調停というのは簡単に言うと、裁判所の調停委員という男女各1名を介して相手方とお話合いをする手続です。要は、当事者本人同士でお話合いをしてもまとまらないので、第三者である調停委員を通してお話合いをしてみましょう、というものです。調停は離婚や相続といった家事問題で利用することが多いですが、これは家庭内の問題は強権的に決めるよりも前に当事者同士で話合いによる解決を図った方が望ましいからだと言われています。

 調停は、当事者間で合意ができなければ成立しません。合意ができない場合、調停は「不成立」(「不調」ともいいます)となり、そのまま終了したり、自動的に「審判」という手続に移行したりします。
 私も調停の代理人となることが多々あります。しかし、弁護士が代理人として入ったからといって必ずしも合意ができるというわけではありません。調停は、最終的には当事者本人の間で合意ができるかどうかという問題に帰着するため、弁護士に依頼しても必ずしも合意ができるというものではないのです。
 それでは、調停は弁護士に依頼しないでも良いかというと、実はそうとも言い切れない面があります。例えば、

①調停委員の態度が変わる。
 調停委員が好意的な態度の方が、調停に安心して臨むことができるのはもちろんです。
 以前、関西の某家庭裁判所でのことですが、離婚調停の妻側の方で、最初は自分だけで調停に行ったら調停委員から罵詈雑言を浴びせられてほとほと参ってしまったという相談がありましたが、次の期日には私が代理人となって一緒に調停に行ったところ、調停委員は普通の態度に変わっていて非常に驚いていました。私にとっては変わったかどうかも分からないのですが、そこまで極端でなくても弁護士の有無によって調停委員の態度が少なからず変わる場合があるようです。

②調停の進行を円滑にする。
 調停というのはお話合いが基本となりますので、ともすれば本筋と関係のない話を延々と続けて、肝心なところは何も話が進んでいないということもないわけではありません。
 これも調停委員の個性によるところだと思いますが、さっさと条件の折り合いがつくかどうかという結論を急く調停委員もいれば、当事者の感情の部分に根気よく耳を傾ける調停委員もいます。後者の場合、肝心の話は何も進まずに期日だけが何度も開かれるということになりがちです。そういうときに弁護士がついていれば、要点を押さえた進行が可能となります。

③自分に有利な方向で調整を進行させる。
 これが一番のメリットだと思いますが、弁護士がついていた方が自分にとって有利な方向で調停を進めることができる可能性が高まります。
 他方、特に弁護士が介入してもしなくても結果に大差ないと見込まれる事案については、相談だけ受けて調停は自分で進めるということも可能です。
 ただ、最初に自分だけで調停を進めて、相当回数が経過してから弁護士に依頼するというのは、あまり望ましくありません。後から弁護士が入っても、既にできてしまっている流れを変えることは難しく、下手をしたらもう手遅れということもあります。弁護士に依頼するなら早めに相談した方が良いでしょう。これは裁判でも同じです。

 といったようなことがあげられます。
 調停は裁判のように厳格な手続ではないので、弁護士に依頼せずにご自分で進めていらっしゃる方を家庭裁判所で良く見かけます。そのうちどれくらいの方が弁護士に相談しているのかは分かりませんが、相続や離婚のような家庭内のことについては弁護士にもなかなか相談しづらいのではないかと気になったりします。

 当事務所では遺産分割の法律相談は無料、離婚の法律相談は初回無料というキャンペーンを行っています。もし遺産分割や離婚の調停でお悩みの方は、お気軽にご相談頂ければと思います。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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