離婚の際に考えるべきポイント

現代日本では離婚率は約3~4割といわれています。これが多いか少ないかは何とも言えませんが、少なくとも離婚が日常生活に身近に感じられる程度にはなってきていることは確かです。また、熟年離婚という言葉があります。熟年離婚に明確な定義
はありませんが、離婚当事者が高齢化したことにより若年夫婦の離婚と較べて財産分与などの問題がクローズアップされるようにもなりました。
ここでは、離婚の実務の基本的な流れについてご説明します。

目次

離婚が認められるためには

離婚は、夫婦が合意して役所に離婚届を提出すれば可能です。

この場合は協議離婚と呼ばれ、日本の離婚の9割以上が協議離婚であるといわれています。

当事者間で離婚の合意ができない場合には、家庭裁判所で離婚調停を行うことになります。

調停では調停委員(男1名、女1名)を介して協議をし、合意ができれば離婚が成立します。

なお、離婚調停が成立する期日には、たとえ代理人弁護士に依頼している場合であっても、当事者本人が必ず裁判所に出席する必要があります。これは、最後に裁判官から当事者本人に対して離婚の意思確認を行うためです。

調停でも合意ができなければ、訴訟を提起する必要があります。

ただ、訴訟になってからでも合意ができれば、和解手続により離婚が可能です。離婚訴訟で和解が成立する場合も、和解期日には代理に弁護士だけでなく当事者本人が裁判所に出席する必要があります。

他方、和解できない場合には、最終的には裁判所が離婚を認めるかどうかの判決を出すこととなります。

したがって、はっきりとした離婚原因があり判決まで行って離婚が認められる可能性が高いといえる場合には離婚を請求する側が優位な立場になります。

他方で、離婚原因がなく判決では離婚が認められない可能性が高い場合には、協議や調停、訴訟上の和解での離婚成立を目指すこととなり、そのためには相手方の合意が必要となるため、離婚を請求される側が優位な立場になります。

離婚原因とは

訴訟の判決で離婚が認められるためには、夫婦の間に離婚原因があることが必要です。

離婚原因は法律で決められていて、以下の5つです(民法770条1項1号~5号)。

①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

この中で実務上多いのが、①不貞行為と、⑤婚姻を継続し難い重大な事由の2つです。

①不貞行為とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性交を行うことをいいます。いわゆる不倫がこれに該当します。

⑤婚姻を継続し難い重大な事由とは、婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことをいいます。これは抽象的包括的な内容で、①~④に当て嵌まらない理由であっても、婚姻を継続し難い重大な事由に該当すれば離婚原因があると認められるというものです。

婚姻を継続し難い重大な事由で実務上最も多いのが別居で、他には家庭内暴力(DV)やモラルハラスメント等も婚姻を継続し難い重大な事由に該当するか否かという問題になります。

よく別居期間が続けば離婚できるようになるといわれることがありますが、離婚が認められる別居期間については法律で定められているわけではありません。

よって、どれくらいの別居期間であれば婚姻を継続し難い重大な事由に該当するかという問題になります。

ただ、これは裁判官によっても考えが異なっており、概ね3年以下とする裁判官が多く、1~2年で離婚を認めるという裁判官もいます。特に近時は、必要とされる別居期間は短くなっている傾向があるように思われます。

また、単なる別居期間ではなく、その間に夫婦間でどのようなやり取りがあったか等も加味して決められます。夫婦が反目していれば必要な別居期間は短くなるでしょうし、夫婦が別居中も頻繁に連絡し合っていれば別居期間は長くなる傾向になるでしょう。

離婚条件とは

離婚するためには、離婚することへの合意と、未成年の子がいる場合はその親権者さえ決めれば離婚できます。

しかし、離婚と親権以外にも、諸々の条件を決めた上でなければ離婚しない、言い換えれば離婚条件がまとまらなければ離婚自体に合意しないというのが一般的です。

主な離婚条件としては以下のようになります。

・離婚慰謝料
・財産分与
・年金分割

(未成年の子がいる場合)
・親権者
・養育費
・面会交流

離婚慰謝料は、離婚についてどちらかに有責性(暴力や不貞など)がある場合に、その有責行為によって離婚に至らされたことによる精神的苦痛を慰謝するために認められます。

いわゆる相場としては100万~300万円の範囲に収まることが多いようです。

なお、離婚原因が不倫で、不倫相手から既に慰謝料を貰っている場合には、その分だけ離婚慰謝料は減額されるのが原則です。

また、有責性はないけれども、早期に離婚するため、解決金等の名目で一定金額を支払うものとすることもあります。

年金分割は、按分割合を0.5と決めるのが原則で、これ以外の按分割合とすることはまずありません。

また、平成20年4月1日以降に婚姻した場合には、3号分割の手続により当然に分割できるので、年金分割の合意をする必要はありません。

財産分与、養育費、面会交流については個別にご説明します。

離婚協議書は公正証書にするべきか

離婚の合意ができた場合、合意した内容を書面にすることがあります。

このような書面を離婚協議書などといいますが、特に定まった呼称はありません。

離婚協議書の作成方法は、離婚条件に関する合意内容を明記し、日付を入れて当事者双方が署名捺印すれば完成です。捺印は実印でなくても構いません。

ところで、離婚協議書を公正証書にした方が良いか、という質問がよくあります。

離婚協議書は、普通のコピー用紙等で作成したものであっても、法的には有効です。公正証書にしないと法的に無効になるなどということはありません。

それでも離婚協議書を公正証書にする目的は、将来的に不払いが起きたときにすぐに強制執行(給与の差押え等)ができるようにするためです。

これは、強制執行認諾文言付きの公正証書にすることで、当該公正証書に基づいてすぐに裁判所に強制執行の手続が申請できることによります。

他方、普通のコピー用紙等で作成した離婚協議書では、そのまますぐに強制執行をすることはできません。コピー用紙等で作成した離婚協議書を証拠として訴訟を提起し、判決を獲得して、判決に基づいて強制執行をすることになります。

したがって、離婚協議書を公正証書にした方が良い場合というのは、

・養育費の支払いがあるケース

・慰謝料や財産分与の分割払いがあるケース

のいずれかになります。

逆にいえば、未成年の子がいないなど養育費等の支払いを決める必要がなく、特に将来不払いになる恐れがないケースでは、わざわざ公正証書にする必要はありません。

まとめ

協議離婚では、弁護士が介入することなく当事者間で解決できるケースも多いと思われます。

しかし、養育費や慰謝料などの取り決めをする場合、いわゆる相場とは異なった取り決めをしたりするなどして、後になって揉めて相談に来られるケースもあります。

そのため、できれば協議離婚をする前に一度は弁護士に相談した方が良いでしょう。

また、調停や訴訟になると、裁判所での手続を効率よく、そして自分にとって有利になるように進めるためには、専門的な知識と経験が必要です。

したがって、弁護士に依頼せずに進めるのはお勧めできません。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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