裁判で800万円の不倫慰謝料請求に対して不貞の故意がないと認定されて和解金10万円で解決したケース

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事案の概要

Aさんは婚活で知り合った男性(Z氏)と交際を始めました。

しかし、交際をして5年目になって、Z氏の妻から不倫慰謝料として800万円を請求するという訴状が届きました。

訴状を見て初めてAさんはZ氏が既婚者であることを知りました。AさんがZ氏に確認すると、Z氏は実は結婚歴20年で、子どもも3人いることを認めました。

当事務所の強み

本件では、Aさんに不貞の故意があるかが問題となります。

不貞の故意とは、相手が既婚者であることを知りながら不貞関係となることをいいます。もし相手が既婚者であるとは知らなかったのであれば、不貞の故意がないので、慰謝料請求は認められません。

しかし、Aさんに不貞の故意がないと断言するには躊躇される事情が多々ありました。AさんもZ氏も相応の年齢であり、結婚を前提として5年も交際しているのであればZ氏が既婚者であることは分かったはずではないのか、などです。

実際、Aさんは複数の弁護士に相談したけれども、どこも不貞の故意で争うことは断られたため、当事務所に相談に来られたという経緯でした。

その上で、当職は妻側から提出された訴状と証拠の内容を精査しました。その結果、Aさんに不貞の故意があったことを直接的に示す事情や証拠が一切ないことが分かりました。例えば一般的に不貞の故意を示す証拠としてはメールのやり取りなどがありますが、本件ではAさんとZ氏ともにZ氏に妻がいることを前提とした発言等をしている証拠がないのが確認できました。

そこで、裁判では当方から、Aさんには不貞の故意がなかったこと、妻側の証拠にもAさんに不貞の故意があったことを示すものはないことを丁寧に論じました。

妻側からはかまをかけるような主張や大量の確認事項が出されたりもしましたが、そのすべてについて慎重に反論し、揚げ足や言質を取られないように細心の注意を払いました。

解決結果

裁判は尋問手続まで進み、尋問を実施した後で和解協議が行われ、裁判官から「不貞の故意は認められないので判決では妻側の請求を棄却することになる」という心証が開示されました。

その上で、裁判官から早期解決として解決金10万円という小額での和解を打診されたので、Aさんの了解を得て、解決金10万円を支払う旨の和解が成立しました。

結果的に、妻側の請求額800万円から790万円も減額して解決できました。

他の弁護士との違い

最初に提出された訴状や証拠の内容をきちんと読み込むことができれば、不貞の故意が簡単に認められるとは限らない事案であることが確認できました。 そのためには、弁護士に不倫慰謝料請求に関する豊富な経験が必要です。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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