【完全版】札幌の相続手続き・全スケジュール|期限別にやるべき事を網羅したチェックリスト
ご家族がお亡くなりになり、深い悲しみの中、相続という複雑な手続きに直面されていることと存じます。
何を、いつまでに、どこへ提出すれば良いのか、不安な気持ちで情報を探されている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、札幌市にお住まいの皆様が相続手続きを円滑に進められるよう、期限別に「やるべきこと」を網羅した完全版のチェックリストをご用意しました。
一つひとつのステップを丁寧に進めていくことで、必ず乗り越えることができます。
まずは全体像を把握し、落ち着いて取り組んでいきましょう。
相続発生直後(~14日以内)の緊急手続きチェックリスト
ご家族が亡くなられた直後は、葬儀の準備などで大変慌ただしい時期ですが、法律で定められた期限のある手続きがいくつも存在します。
この最初のステップを確実に行うことが、後の手続きをスムーズに進め、余計なトラブルや不安を避けるための鍵となります。
まずは以下のチェックリストに沿って、一つずつ確認していきましょう。
手続き | 期限 | 提出・連絡先 | 主な必要書類・注意点 |
死亡診断書・死体検案書の受取 | 速やかに | 病院・警察 | 医師から受け取ります。後のあらゆる手続きの起点となる最重要書類です 。 |
死亡届の提出 | 死亡を知った日から7日以内 | 市区町村役場 | 故人の本籍地、死亡地、または届出人の所在地の役場に提出します 。 |
死体火葬・埋葬許可申請 | 死亡届と同時(7日以内) | 市区町村役場 | 死亡届を提出する際に同時に申請するのが一般的です。通常は葬儀社が代行します 。 |
年金に関する手続き | 速やかに | 年金事務所年金相談センター | 年金事務所または年金相談センターに連絡し、未支給年金の有無を確認し請求手続きを行います。 |
世帯主変更届 | 14日以内 | 住所地の市区町村役場 | 故人が世帯主で、残された世帯員が2名以上いる場合に必要です 。 |
健康保険証の返却・資格喪失届 | 速やかに(14日以内目安) | 住所地の市区町村役場(国民健康保険の場合) | 故人の保険証を返却します。この手続き後に葬祭費・埋葬料の請求が可能になります 。 |
介護保険資格喪失届 | 14日以内 | 住所地の市区町村役場 | 故人が65歳以上、または40歳以上65歳未満で要介護認定を受けていた場合に必要です 。 |
公共料金等の名義変更・解約 | 速やかに | 各契約会社 | 電気、ガス、水道、電話、インターネットなど。故人の口座からの引き落としは凍結されるため、速やかな対応が不可欠です 。 |
相続開始から3ヶ月以内:相続の方向性を決める最重要フェーズ
最初の行政手続きを終えたら、次は相続財産の全体像を把握し、どのように相続するかという根本的な方針を決める非常に重要な期間に入ります。
特に「相続放棄」の判断には3ヶ月という厳格な期限が設けられており、この期間の調査と判断が、ご自身の将来に大きな影響を与えます。
遺言書の確認と検認手続き
まずは、故人が遺言書を遺していないかを確認することが最優先です。
遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けることになります。
- 遺言書の探し方
- 自宅の金庫や仏壇、タンスなど故人が大切に保管しそうな場所を探す 。
- 公証役場で「公正証書遺言」を作成していないか問い合わせる。
- 法務局の「遺言書保管制度」を利用していないか確認する 。
- 信頼できる知人や専門家(弁護士など)に預けていないか確認する。
- 遺言書の検認《けんにん》手続き
- 公正証書遺言以外の遺言書(自筆証書遺言など)が見つかった場合、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です 。
- 検認は、遺言書の偽造や変造を防ぎ、その状態を保全するための手続きであり、遺言の有効性を判断するものではありません。
- 封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人立会いのもとで開封しなければなりません 。
相続人の調査と確定
次に、法的に誰が相続人になるのかを正確に確定させる必要があります。
ご自身が把握している家族関係だけでなく、故人の過去の婚姻関係や、認知している子の有無などをすべて洗い出す必要があります。
- 戸籍謄本の収集
- 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)をすべて取得します 。
- 加えて、相続人全員の現在の戸籍謄本も必要です。
- これらの書類は、後の不動産登記や預金解約など、あらゆる手続きで必要となります。
- 法定相続情報証明制度の活用
- 収集した戸籍謄本一式を法務局に提出し、「法定相続情報一覧図」の写しを発行してもらう制度です 。
- この一覧図があれば、その後の金融機関や法務局での手続きの際に、大量の戸籍謄本の束を何度も提出する必要がなくなり、手続きが大幅に簡略化されます 。
相続財産の全体像を把握する
相続は、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産もすべて引き継ぐのが原則です。
そのため、相続の方針を決める前に、財産の全体像を正確に把握することが不可欠です。
- プラスの財産の調査
- 預貯金: 預金通帳やキャッシュカードを手がかりに、金融機関に「残高証明書」の発行を依頼します 。
- 不動産: 札幌市内の各区役所や市税事務所で「名寄帳《なよせちょう》」や「固定資産評価証明書」を取得し、所有不動産を網羅的に確認します 。
- 有価証券: 証券会社からの郵便物などを元に、株式や投資信託の有無を確認し、「残高証明書」を請求します。
- 生命保険: 保険証券を探し、保険会社に連絡して受取人や金額を確認します。
- その他: 自動車、ゴルフ会員権、骨董品、貸付金など。
- マイナスの財産の調査
- 故人宛ての請求書や督促状、郵便物を確認する 。
- 金銭消費貸借契約書や借用書がないか探す。
- 信用情報機関(JICC、CIC、KSC)に情報開示請求を行い、故人の借入状況を確認する 。
この財産調査は、単に書類を集めるだけではありません。特にマイナスの財産は、表面化しにくいケースも多く、調査が不十分なまま3ヶ月の期限を過ぎてしまうと、後から発覚した多額の借金を背負ってしまうリスクがあります。また、上記のマイナスの財産の調査方法はあくまで一例であり、調査の対象に含まれない債務(知人や親族からの借金等)が残り得る点に留意する必要があります。
相続放棄・限定承認の判断【最重要期限】
財産調査の結果、マイナスの財産がプラスの財産を上回る可能性がある場合、「相続放棄」または「限定承認」を検討する必要があります。
この判断は、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で行わなければならず、一度選択すると原則として撤回できません 。
選択肢 | 概要 | メリット | デメリット | こんな時に検討 |
単純承認 | 全ての財産(プラスもマイナスも)を無条件に相続する。 | 手続きが最もシンプル。 | 予期せぬ多額の借金も引き継いでしまうリスクがある。 | プラスの財産が明らかに多い場合。 |
限定承認 | プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する。 | プラスの財産を超える借金を負うリスクを回避できる。自宅など特定の財産を残せる可能性がある。 | 手続きが非常に複雑で、相続人全員で申し立てる必要がある。時間がかかる。 | 借金の額が不明確だが、どうしても残したい財産がある場合。 |
相続放棄 | 全ての財産(プラスもマイナスも)を一切相続しない。 | 借金を引き継ぐ義務が完全になくなる。 | 自宅や預貯金など、プラスの財産も一切相続できなくなる。 | 明らかに借金の方が多い場合。相続トラブルに関わりたくない場合。 |
もし3ヶ月以内に財産調査が終わらず判断が難しい場合は、家庭裁判所に申し立てることで、この期間(熟慮期間)を延長できる可能性があります 。
相続開始から4ヶ月以内:故人の所得税申告(準確定申告)
故人が生前に一定の所得を得ていた場合、相続人は故人に代わって所得税の確定申告を行う義務があります。
これを「準確定申告《じゅんかくていしんこく》」といい、通常の確定申告とは異なる点が多くあります。
- 準確定申告が必要な主なケース
- 個人事業主やフリーランスだった(事業所得)。
- アパート経営などで家賃収入があった(不動産所得)。
- 給与収入が年間 2,000 万円を超えていた。
- 2ヶ所以上から給与を受け取っていた。
- 給与所得以外に、副業などで年間 20 万円を超える所得があった。
- 多額の医療費を支払っており、医療費控除を申請することで還付が見込める場合。
準確定申告は、故人の最後の住所地を管轄する税務署に、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に提出・納税する必要があります 。
期限に遅れるとペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。
また、申告の結果、税金が還付されることもあり、その還付金は相続財産の一部となります 。
項目 | 準確定申告 | 通常の確定申告 |
対象期間 | 1月1日から死亡日まで | 1月1日から12月31日まで |
申告者 | 相続人全員(連署が原則) | 本人 |
申告期限 | 相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内 | 翌年の2月16日~3月15日 |
提出先 | 故人の住所地の管轄税務署 | 申告者本人の住所地の管轄税務署 |
控除の対象 | 死亡日までに支払った医療費や保険料など | 年間に支払った医療費や保険料など |
相続開始から10ヶ月以内:遺産分割と相続税申告の山場
相続手続きのクライマックスとも言えるのが、この10ヶ月の期間です。
相続人全員で遺産の分け方を具体的に決め、相続税が発生する場合には申告と納税を完了させる必要があります。
遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
遺言書がない場合、または遺言書で指定されていない財産がある場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。
これを「遺産分割協議《いさんぶんかつきょうぎ》」と呼びます。
- 話し合いの進め方
- 相続人全員の参加が必須です。一人でも欠けると協議は無効になります。
- 話し合いの基準として、法律で定められた相続割合である「法定相続分」が参考にされます 。
- ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で分割することも可能です 。
- 法定相続分の早見表
相続人の組み合わせ | 配偶者 | 子 | 直系尊属(父母等) | 兄弟姉妹 |
配偶者と子 | 1/2 | 1/2(複数いる場合は均等に分ける) | – | – |
配偶者と直系尊属 | 2/3 | – | 1/3(複数いる場合は均等に分ける) | – |
配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | – | – | 1/4(複数いる場合は均等に分ける) |
子のみ | – | すべて | – | – |
直系尊属のみ | – | – | すべて | – |
兄弟姉妹のみ | – | – | – | すべて |
- 遺産分割協議書の作成
- 話し合いで合意した内容は、「遺産分割協議書」という正式な書面にまとめます 。
- この書類には、相続人全員が署名し、実印を押印します。
- 不動産の名義変更(相続登記)や、預貯金の解約・名義変更など、ほとんどの相続手続きでこの協議書の提出が求められます 。
遺産分割協議がまとまらない、相続人間で意見が対立しているといった状況では、10ヶ月という期限はあっという間に過ぎてしまいます。
特に相続税の申告が必要な場合、協議がまとまらないと税金の特例が使えず、納税額が大幅に増えてしまうリスクもあります。
このような複雑な状況では、法律の専門家である弁護士が間に入ることで、冷静かつ公平な解決へと導くことが可能です。
もし少しでも不安があれば、お早めに専門家にご相談ください。
相続税の申告と納税【札幌市の窓口】
相続財産の総額が、法律で定められた「基礎控除額」を超える場合に、相続税の申告と納税が必要になります。
基礎控除額は以下の式で計算されます。
3,000 万円 + (600 万円 × 法定相続人の数)
この計算の結果、財産が基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要です。
申告が必要な場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、故人の最後の住所地を管轄する税務署へ申告書を提出し、納税まで完了させなければなりません 。
期限を過ぎると、「無申告加算税」や「延滞税」といった重いペナルティが課せられるため、計画的な準備が不可欠です 。
- 札幌市内の相続税申告窓口(管轄税務署)
管轄区域 | 税務署名 | 所在地・連絡先 |
中央区の一部 | 札幌中税務署 | 札幌市中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎 電話: 011-231-9311 |
北区、東区 | 札幌北税務署 | 札幌市北区北31条西7丁目3-1 電話: 011-707-5111 |
白石区、厚別区 | 札幌東税務署 | 札幌市厚別区厚別東4条4丁目8-8 電話: 011-897-6111 |
豊平区、南区、清田区 | 札幌南税務署 | 札幌市豊平区月寒東1条5丁目3-4 電話: 011-555-3900 |
中央区の一部、西区、手稲区 | 札幌西税務署 | 札幌市西区発寒4条1丁目7-1 電話: 011-666-5111 |
※管轄の詳細は国税庁のウェブサイト等でご確認ください 。
期限は長いが重要な手続きと権利
10ヶ月の大きな山場を越えても、まだ重要な手続きが残っています。
これらの手続きは期限に余裕があるため後回しにしがちですが、忘れると不利益を被る可能性があるため、必ず対応しましょう。
不動産の相続登記(3年以内・義務化)と札幌の法務局
不動産を相続した場合、その名義を故人から相続人へ変更する手続きを「相続登記」といいます。
2024年4月1日から法律が改正され、この相続登記が義務化されました 。
相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料が科される可能性があります 。
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。札幌市は区によって管轄が細かく分かれているため注意が必要です。
- 札幌市内の不動産登記管轄法務局
不動産の所在地(区) | 管轄法務局 | 所在地・連絡先 |
中央区 | 札幌法務局(本局) | 札幌市北区北8条西2丁目1-1 電話: 011-709-2311 |
豊平区、南区、清田区 | 札幌法務局 南出張所 | 札幌市豊平区平岸1条22丁目2-25 電話: 011-824-7411 |
北区、東区 | 札幌法務局 北出張所 | 札幌市北区北31条西7丁目1-1 電話: 011-700-3311 |
西区、手稲区 | 札幌法務局 西出張所 | 札幌市西区発寒4条1丁目1-1 電話: 011-664-2251 |
白石区、厚別区 | 札幌法務局 白石出張所 | 札幌市白石区本通1丁目北4-2 電話: 011-864-2021 |
※上記は札幌市内の不動産に関する管轄です。市外の不動産については管轄が異なります。
遺留分侵害額請求(1年以内)で最低限の権利を守る
相続手続きは、国や役所から課せられた義務を果たすだけではありません。
法律は、相続人に「自ら主張して初めて認められる権利」も与えています。その代表が「遺留分《いりゅうぶん》」です。
- 遺留分とは
- 遺留分とは、故人の配偶者、子(または孫)、父母などの近しい相続人に保障された、最低限の遺産の取り分のことです 。
- たとえ遺言書に「全財産を愛人に遺す」「長男にすべて相続させる」と書かれていても、他の相続人はこの遺留分を主張することで、一定の財産を取り戻すことができます 。
- 重要な点として、故人の兄弟姉妹には遺留分はありません 。
- 遺留分侵害額請求の期限
- この権利は自動的に認められるものではなく、自ら「遺留分を侵害されているので、その分を金銭で支払ってほしい」と請求(遺留分侵害額請求)する必要があります。
- この請求ができる期間は、相続の開始と遺留分が侵害されていることを知った時から1年以内と非常に短く定められています 。
- この1年以内の請求により、あなたの権利は具体的な『金銭支払請求権』に変わります。そして、この金銭債権自体にも、権利を行使できることを知った時から5年という消滅時効があります。したがって、請求後は速やかに相手方との交渉や、まとまらない場合は法的手続き(調停や訴訟など)を進める必要があります。
- 遺言書の内容に納得がいかない場合は、すぐに専門家である弁護士に相談することが重要です。
弁護士は、単に行政手続きを代行するだけでなく、このような皆様の正当な権利を守り、実現するための強力な味方となります。
弁護士への相談を強く推奨するケース
相続手続きはご自身で進めることも可能ですが、以下のようなケースでは、手続きが複雑化したり、深刻なトラブルに発展したりする可能性が高いため、早期に弁護士へ相談することを強くお勧めします。
- 相続人同士で遺産の分け方を巡って意見が対立している、または話し合いができない 。
- 遺言書の内容に納得できない、またはその有効性に疑問がある。
- 調査の過程で、故人の多額の借金や保証債務が見つかった 。
- 相続財産に不動産が多く含まれていたり、非上場株式など評価が難しい財産がある。
- 相続人の中に行方不明者、認知症の方、未成年者がいる 。
- 相続放棄を検討しているが、3ヶ月の期限が迫っている、または既に過ぎてしまった 。
- 遺留分を請求したい、または他の相続人から請求されている。
- 仕事が忙しく、複雑な手続きを自分で行う時間がない。
一つでも当てはまる点があれば、お一人で抱え込まず、まずは専門家の意見を聞いてみることが、最善の解決への第一歩です。
まとめと次のステップ
この記事では、札幌市で相続が発生した際の手続きについて、期限別に網羅的なスケジュールとチェックリストを解説しました。
相続手続きは、期限が短いものから長いものまで多岐にわたり、一つひとつを正確に進めていく必要があります。
この記事で解説した内容は、あくまで一般的なケースです。
個別の状況によっては、より複雑な手続きや判断が必要になることも少なくありません。
もし少しでもご不安な点があれば、お一人で悩まずに、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
葛葉法律事務所では、初回相談を無料で承っております。
あなたのお悩みに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。
監修:葛葉法律事務所