不動産を相続したくない場合の対処法|相続放棄して国庫に帰属するまで

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相続人がいない遺産は国庫に帰属する

老朽化した物件で使用収益できないのに固定資産税だけかかるといったように、所有するだけでマイナスになるような不動産のことを「負動産」と呼んだりします。
では、このような不動産を誰も相続したくないとなったら、どうなるでしょうか?

まず、相続人がいない場合、特別縁故者に遺産の全部または一部を取得することができるとされています(民法958条の2)。
特別縁故者というのは、被相続人と生計を同じくしていた者や、被相続人の療養監護に務めた者などをいいます。
そして、相続人も特別縁故者もいない場合、遺産を取得する者が一切存しないこととなるため、遺産は国庫に帰属することになります(民法959条)。

相続放棄をするだけでは逃げられない

それでは、相続放棄をすれば不動産を簡単に手放すことができるのでしょうか?

この点、相続の放棄をした者は、相続放棄の時点で遺産を現に占有しているときは、次の相続人が遺産の管理を始めることができるまで、自己の自己と同程度の注意をもって遺産の管理を継続しなければならないとされています(民法940条1項)。
この場合、自分が相続したことによって新たに相続人となる者が遺産の管理をすることができるよう、遺産を管理して引き継ぐ必要があります。

もし不動産に住んでいるというわけでなく、相続人が複数いる場合などは、相続放棄をしても他の相続人が管理責任を負うことになると解されるので、先に相続放棄をした者から不動産の管理責任から逃れられるということになるでしょう。
他方、これまで不動産に住んでおり、相続人が他にいないような場合には、新しく相続人となる者に引き継ぐまで管理する必要があるでしょう。

相続財産が国庫に帰属するまで

それでは、全員が相続放棄をして相続人がいないという状況になったらどうなるでしょうか?
このときは、次の相続人もいないので、後は国に任せて放置すれば足りるでしょうか?

この点、相続人のいなくなった財産は、自動的に国庫に帰属するということにはなりません。
手続としては、相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てます(民法952条1項)。
したがって、相続放棄をしても不動産の管理責任が残るときは、その不動産の責任から逃れるために、相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。
しかし、これには相応の費用(数十万~百万円程度)がかかるので、不動産を相続放棄で手放すためには最終的にこの費用についても見越しておく必要があります。

その後、裁判所の選任した相続財産管理人は、相続人や特別縁故者がいないことを確認した上で、遺産を国庫に帰属させる手続します。
ただ、実際に不動産が国庫に帰属されるということは例外的で、実際には相続財産管理人が競売等で不動産を現金化した上で、その金額を納付するということが多いようです。

まとめ

相続したくない不動産があるなら早めに相続放棄を検討する。
相続放棄だけでなく相続財産管理人の選任申立が必要になる場合もある。


この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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