相続のご相談 ~遺産の使い込み~

 相続問題のご相談が増えています。

 特に昨今多くなっているのが、一部の相続人が遺産の預貯金を使い込んでしまった、あるいは、他の相続人から使い込んだと指摘されている、という事例です。
 高齢化社会のため、高齢者の親族の面倒を見ることとなった近親者が財産関係も含めて管理していたところ、いざ相続開始となった時点で(あるいはその前から)財産を使い込んでいるのではないかという疑いを向けられるようになったのでしょう。

 このような場合、使い込んでしまった者勝ちになるかというと、そのような単純なことにはなりません。

 まず、預貯金を使い込んでしまったと思われる相続人に対してどのような請求ができるか。
 実は、請求の仕方によって、遺産分割調停の中で解決することもあれば、遺産分割調停とは別に裁判を起こして解決することもあります。どのような請求をするのが最も効果的かは、事案によって異なります。

 他方、預貯金を使い込んだと疑われている側は、どうすればよいか。
 まずは、何にいくら使ったかということをひとつひとつ説明することになります。その際、一番望ましいのは費消した金額に対応する領収証等の資料が全て残っていることですが、実際には全て残っていることはほとんどないため、領収証等の資料がない支出についてどのように説明するかということが大事になってきます。

 いずれにしろ、もし高齢者の親族の面倒を見ることとなった場合に、その高齢者の預貯金をもあわせて管理するときは、何に費消したのか、きちんと領収証を保存して管理しておくことが、後々の紛争を予防することになります。
 特に、高齢者の方が認知症になったときは、成年後見制度を利用して財産関係の管理を専門家に委ねた方が、将来の紛争を回避でき、領収証等を整理保管するという日常的な煩わしさもなくなります。

 当事務所では、遺産の使い込みを請求する側と請求される側のどちらのパターンでもご依頼を受けております。
 また、調停で行う場合と裁判で行う場合の両方のパターンを処理してきましたので、どのような請求をするのが良いか、請求をされた場合にどのような対応をすれば良いか、双方の視点に立ってお客様にご説明しております。

 もし遺産の使い込みについてお悩みのときは、お早めにご相談頂ければと存じます。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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