調停に代わる審判とは

相続人が多数いる場合、あるいは、相続人が全国に散らばっている場合などでは、相続人全員が家庭裁判所の調停期日に出席することが事実上難しいことがあります。
そのようなケースでは、相続分の譲渡をして相続人の数を減らすなどといったスキームがとられることがあります。
そのような便法のひとつとして、調停に代わる審判というものがあります。

調停に代わる審判とは、調停が成立しないけれども、家庭裁判所が相当と認めた場合に、調停の事情に基づいて審判を出すというものです。
通常の審判であれば調停不成立後に審問等を経た上で裁判所が審判を出しますが、この場合は調停からすぐに審判が出されます。
家事事件手続法第284条1項では、「家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる」と規定されています。

この審判は、2週間以内に異議申立てがされなければ確定し、調停成立と同様の効果が発生します。
逆に言うと、2週間以内に当事者のどちらかから異議申立てがされた場合には、審判の効力は失われます。そのため、裁判所としては、異議申立てがされないような審判が出せる状況でなければ、調停に代わる審判をしないのが通例です。

一般的には、当事者間でほぼ合意ができているけれども、枝葉末節の細かい点で合意ができないという場合に、その点についてだけ裁判所が解決のために判断を下す、というようなケースで利用されることが多いです。

調停に代わる審判であれば、裁判所が遺産分割を決定しますので、必ずしも調停に出席する必要はありません。
したがって、調停申立前に当事者間で書面でやり取りし、遺産分割案についてほぼ合意ができているような場合には、裁判所に調停に代わる審判を出してもらうというのもひとつの方法です。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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