札幌の不動産相続【完全ガイド】2025年最新版|評価・分割から相続登記義務化まで弁護士が徹底解説
相続財産に、札幌市内にある土地やマンションなどの不動産が含まれている場合、その手続きは預貯金の相続に比べて格段に複雑になります。
「この土地は一体いくらの価値があるのだろう?」
「どうやって公平に分けたらいいのか…」
「最近よく聞く『相続登記の義務化』って何?」
こうした疑問や不安を抱える方は少なくありません。不動産相続は、評価、分割、登記という複数のステップを正しく理解し、計画的に進めることが極めて重要です。
この記事では、札幌で不動産を相続することになった方へ向けて、最新の法改正を踏まえ、一連の手続きの流れと重要なポイントを、法律の専門家である弁護士が分かりやすく徹底解説します。
【ステップ1】相続する不動産の価値を知る|評価方法の基本と2024年改正
不動産をどう分けるか話し合う前に、まずはその不動産がいくらの価値を持つのかを客観的に把握する必要があります。
評価方法の基本原則:「相続税評価額」と「実勢価格」は違う
相続における不動産の評価は、主に相続税や贈与税を計算するために、国税庁が定めた「財産評価基本通達」というルールに基づいて行われます 。この通達によって算出された価格を「相続税評価額」と呼びます。
しかし、最も重要なのは、この「相続税評価額」は、実際に市場で売買される価格である「実勢価格(時価)」とは異なるという点です。一般的に、土地の相続税評価額(路線価)は実勢価格の80%程度が目安とされており、常に時価より低く評価される傾向があります 。この価格差は、後の遺産分割で代償金の額などを決める際にトラブルの原因となるため、最初にこの違いを明確に認識しておくことが不可欠です。
土地の評価方法:「路線価方式」と「倍率方式」
土地の相続税評価額は、国税庁が定めた方法で算出します 。
| 評価方法 | 概要 | 札幌での調べ方 |
| 路線価方式 | 道路に面する宅地の1平方メートルあたりの価格(路線価)を基に計算する方法。市街地のほとんどの土地がこの方式で評価されます 。 | 国税庁のウェブサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。直近7年分のデータが公開されています 。 |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域の土地に用いられる方法。土地の固定資産税評価額に、国税庁が定める一定の倍率を乗じて計算します 。 | 路線価図と同様に、国税庁のウェブサイトで確認できます 。 |
家屋・マンションの評価方法:「固定資産税評価額」が基本
マンションなどの家屋は、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。この評価額は、毎年春頃に札幌市から送られてくる「固定資産税・都市計画税 納税通知書」に同封されている「課税明細書」で確認できます 。
【最重要】2024年マンション評価額改正を徹底解説(タワマン節税対策)
2024年1月1日以降の相続から、マンションの評価方法が大きく変わりました。これは、いわゆる「タワマン節税」を是正するための重要な改正です 。
なぜ改正されたのか?
背景には、タワーマンション(特に高層階)の市場価格と相続税評価額との間に著しい乖離があり、これを利用した過度な節税が税の公平性を損なうと問題視されたことがあります 。改正の目的は、マンションの相続税評価額を、少なくとも市場価格の60%に近づけ、戸建て住宅との評価水準のバランスを取ることにあります 。
新しい評価方法の概要
新しいルールでは、従来の評価額が市場価格に比べて著しく低い場合、以下の手順で評価額が補正されます 。
- 「評価乖離率」の算定: 市場価格と従来の評価額の乖離を示す指標です。築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度の4要素から複雑な計算で算出されます 。
- 「評価水準」の判定:
評価水準 = 1 ÷ 評価乖離率で計算し、従来の評価額が市場価格の何%に相当するかを判定します 。 - 評価額の計算:
- 評価水準が0.6未満の場合(乖離が大きい): 評価額が引き上げられます。新しい評価額は
従来の評価額 × 評価乖離率 × 0.6となり、市場価格の60%相当まで強制的に引き上げられます 。 - 評価水準が0.6以上1の場合: 補正は行われず、従来の評価額がそのまま適用されます 。
- 評価水準が1を超える場合: 評価額が引き下げられ、市場価格相当額に補正されます 。
- 評価水準が0.6未満の場合(乖離が大きい): 評価額が引き上げられます。新しい評価額は
この改正により、特に築年数が浅く、総階数が高い都心部のマンションでは、以前のような大幅な節税効果は期待しにくくなりました 。この複雑な計算と税務戦略が必要になったこと自体が、専門家への相談の重要性を高めています。
【ステップ2】どう分ける?不動産の遺産分割4つの方法と潜むリスク
不動産は預貯金のように簡単に分割できないため、誰がどのように相続するかで揉めやすい財産です。分割方法は主に4つありますが、それぞれにメリット・デメリット、そして税務上の注意点があります 。
【重要】4つの遺産分割方法 徹底比較表
| 分割方法 | 概要 | メリット | デメリット | 税務上の影響 | 主な紛争ポイント |
| 現物分割 | 不動産を物理的に分筆するなどして、そのままの形で相続する。 | ・手続きが比較的簡便・思い出の家などを残せる | ・公平な分割が困難 ・土地の価値が下がる可能性 | ・特になし | ・誰がどの部分を取得するか ・分割後の土地の価値の差 |
| 代償分割 | 一人が不動産を相続し、他の相続人に金銭(代償金)を支払う。 | ・不動産を売却せずに維持できる ・公平な分割が可能 | ・不動産を取得する側に十分な資力が必要 ・代償金の支払いが滞るリスク | ・代償金に贈与税は原則かからない | ・不動産の評価額(相続税評価額か時価か) ・代償金の金額と支払方法 |
| 換価分割 | 不動産を売却し、その現金を相続人間で分割する。 | ・最も公平に分割しやすい ・誰も不動産を望まない場合に有効 | ・不動産を手放すことになる ・売却の手間と時間がかかる | ・譲渡所得税が課税される ・取得費加算の特例の適用有無 | ・売却価格、時期、仲介業者の選定 ・譲渡所得税の負担割合 |
| 共有分割 | 不動産を複数の相続人の共有名義で相続する。 | ・手続きが最も簡便に見える ・一時的な解決策となる | ・将来の売却 ・活用に全員の同意が必要 ・次世代相続で権利関係が複雑化 | ・特になし | ・管理費、固定資産税の負担割合 ・共有物分割請求訴訟に発展するリスクが極めて高い |
方法1・2:現物分割と代償分割
現物分割は、土地を分筆するなどしてそのまま相続する方法です 6。
代償分割は、一人が不動産を相続する代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法で、不動産を取得する側に十分な資力が必要です。家庭裁判所の審判では、支払能力がなければ認められない可能性があります。また、代償金の算定基礎となる不動産の評価額を「相続税評価額」と「実勢価格」のどちらにするかで揉めることが非常に多いです。
方法3:換価分割と【要注意】高額になりがちな「譲渡所得税」
換価分割は、不動産を売却して現金で分けるため最も公平ですが、「譲渡所得税」という高額な税金に注意が必要です。
譲渡所得税の重要ポイント
- 納税義務者は誰か?:売却手続きの代表者だけでなく、売却代金の分配を受ける相続人全員が、それぞれの相続分に応じて納税義務を負い、各自で確定申告が必要です。
- 税額の計算方法譲渡所得は 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用) で計算されます。最も重要なのは、相続人は被相続人(亡くなった方)がその不動産を取得した時の価格(取得費)と取得日を引き継ぐという点です 。取得費が不明な場合は、売却価格の5%とみなされ(概算取得費)、税金が非常に高額になることがあります。
- 税率(長期・短期)被相続人の所有期間が5年を超えるか否かで税率が大きく変わります 。
- 長期譲渡所得(5年超):合計約20%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税)
- 短期譲渡所得(5年以下):合計約39%(所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税)
- 節税の鍵「取得費加算の特例」:相続税を納税した人が、相続開始の翌日から3年10ヶ月以内にその不動産を売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる非常に有利な特例です 。これにより譲渡所得が圧縮され、税額を大幅に軽減できます。計算は複雑ですが 、この特例を知っているかどうかで納税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
方法4:共有分割【将来の紛争リスク大】
共有分割は、不動産を複数の相続人の共有名義にすることです。一見簡易で公平に見えますが、将来最も深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。
- 処分・変更には「全員」の同意が必要: 売却や大規模リフォームには共有者全員の同意が不可欠です 9。
- 次世代への相続で権利関係が複雑化: 共有者が亡くなるたびに、相続人が増え、面識のない親族同士が共有者になるなど、関係がネズミ算式に複雑化します。
- 最終手段「共有物分割請求訴訟」: 話し合いがまとまらない場合、共有者の一人はいつでも裁判所に共有物の分割を請求できます 。共有物分割訴訟になると、最終的に不動産が競売にかけられ、市場価格より2〜3割低い価格で売却されることが多く、経済的損失も甚大です 。
安易な共有分割は避け、問題を先送りしないことが賢明です。
【最重要】2024年法改正!相続登記と住所変更登記「2つの義務化」
これまで任意だった不動産登記が、2024年4月1日から法律で義務化されました。これは不動産を所有するすべての人に関わる非常に重要な変更です 。
なぜ義務化されたのか?
背景には、相続登記がされないまま所有者が分からなくなった「所有者不明土地問題」があります。これが公共事業や災害復興の妨げとなり、社会問題化していました 。
義務(1) 相続登記の義務化
- いつまでに?
- 原則: 不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません 。
- 過去の相続分(2024年4月1日より前): 過去の相続も義務化の対象です。期限は「施行日(2024年4月1日)と相続を知った日のいずれか遅い日から3年以内」となります 。単に「2027年3月31日まで」ではないので注意が必要です。
- 遺産分割成立後の新たな義務遺産分割協議が成立した場合、その内容に基づき、成立日から3年以内に登記をする新たな義務が発生します 。
義務(2) 住所等変更登記の義務化【見落とし厳禁】
相続登記と同時に、もう一つの重要な義務が課されました。
不動産所有者は、引越しや結婚などで住所・氏名に変更があった日から2年以内に、その変更登記を申請しなければなりません 。
罰則(過料)と「正当な理由」
正当な理由なくこれらの義務を怠った場合、相続登記は10万円以下、住所変更登記は5万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります 。
「正当な理由」としては、以下のようなケースが想定されています 。
- 相続人が極めて多数で戸籍収集に時間がかかる場合
- 遺言の有効性などで裁判になっている場合
- 登記義務者に重病やDV被害などの事情がある場合
ただし、「遺産分割協議がまとまらない」というだけでは正当な理由と認められない可能性が高いです 。その場合は、次の「相続人申告登記」を利用すべきとされています。
救済策「相続人申告登記」とは?
3年以内の相続登記が難しい場合、簡易な手続きである「相続人申告登記」をすることで、ひとまず義務を果たしたことになり、過料を回避できます 。
- メリット: 相続人の一人から単独で申出ができ、登録免許税もかかりません。添付書類も簡略化されています。
- デメリット(限界): あくまで暫定的な措置であり、所有権が移転するわけではありません。この登記だけでは不動産を売却したり、担保に入れたりすることはできません。最終的に遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に正式な相続登記が別途必要になります 。
札幌で不動産相続をする際の注意点【地域特化版】
使わない不動産は「負」動産に? 札幌市の「特定空家」対策
相続したものの誰も住む予定のない実家は、放置すると固定資産税や管理費がかかるだけの「負動産」になりかねません。特に札幌市では、管理不全な空き家は「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、厳しい措置の対象となります。
「特定空家等」とは?
札幌市は、現地調査の上、以下のような状態の空き家を「特定空家等」に認定します。
- 保安上の危険: 建物の一部が崩壊・飛散する恐れがある。
- 衛生上の有害: ごみが散乱し、害虫や悪臭が発生している。
- 景観の阻害: 窓ガラスが多数割れている、雑草が繁茂している。
放置するとどうなる?(助言・指導から行政代執行まで)
「特定空家等」に認定されると、市から段階的に以下の措置を受けます 。
- 助言・指導: 適切な管理を求める連絡。
- 勧告: 改善されない場合、固定資産税の優遇措置が解除され、税額が最大6倍になる可能性があります。
- 命令: 勧告に従わない場合の改善命令。
- 行政代執行: 命令にも従わない場合、市が所有者に代わって建物を解体し、その費用を全額請求します。
「自治体から指導を受ける」ことは、具体的な金銭的負担を伴う現実的なリスクなのです。
相続放棄という選択肢
借金が多い場合や、関わりたくない不動産を相続した場合は「相続放棄」も選択肢です。ただし、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(民法第915条第1項)。この「知った時」とは、単に亡くなった日とは限らないため、正確な判断が必要です。
不動産相続の手続きと相談窓口【札幌市 具体例】
不動産相続は、状況に応じて様々な専門家の協力が必要です。遺産分割で揉めたら弁護士、登記手続きは司法書士、相続税申告は税理士が主な相談先となります。
しかし、いきなり専門家に依頼するのはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。札幌市内には、無料で相談できる公的な窓口が多数あります。まずはこうした場所で情報を集めるのも有効な手段です。
【保存版】札幌市内の無料・公的相談窓口一覧表
| 相談機関 | 相談内容の例 | 場所・連絡先 | 備考(予約・費用など) |
| 札幌弁護士会 法律相談センター | ・遺産分割の紛争 ・遺言の有効性 ・遺留分侵害額請求 | 札幌市中央区北1条西10丁目 札幌弁護士会館 TEL: 011-251-7730 | 予約制 相続・遺言相談は初回無料(45分以内) |
| 札幌司法書士会 法律相談センター | ・相続登記(名義変更) ・遺言書作成支援 ・相続放棄の手続き | 札幌市中央区南1条東1丁目 パークイースト札幌2階 TEL: 011-272-9035 | 予約制 無料相談(月~金 13-16時, 土 10-13時) |
| 札幌法務局 無料登記相談所「きけるっしょ」 | ・不動産登記全般 ・相続登記の申請書作成 | 札幌市北区北8条西2丁目 札幌第1合同庁舎1階 TEL: 011-709-2311 (内線2185) | 予約制 無料相談(司法書士が対応) 火・水・木・金 午後1時~4時 |
| 北海道税理士会 税の無料相談所 | ・相続税の申告要否 ・譲渡所得税の計算 ・各種税務相談 | 電話相談のみ TEL: 050-3173-8506 | 予約不要 無料電話相談(毎週水曜 13:00-15:30) 一般的な内容に限る |
| 札幌市役所・各区役所 市民相談 | ・法律相談(弁護士) ・司法書士相談 ・税相談(税理士) | 市役所本庁舎および各区役所 市役所法律相談予約: 011-218-5100 | 法律・司法書士相談は当日予約制(朝9時から受付、すぐに定員に達する場合が多い) 無料相談(1人20分~30分程度) |
| 法テラス札幌 (日本司法支援センター) | ・法的トラブル全般 ・弁護士費用、司法書士費用の立替制度 | 札幌市中央区北1条西9丁目 南大通ビルN1 1階 TEL: 0570-078388 | 予約制 収入 ・資産が一定額以下の方は無料法律相談が可能 |
まとめと次のステップ
不動産相続は、その評価から分割方法の決定、そして義務化された登記まで、多くの法律や税金が複雑に絡み合います。特に2024年から始まった2つの登記義務化は、待ったなしの課題です。
この記事で解説した内容は、あくまで基本的な知識です。個別の状況によっては、より複雑な手続きや判断が必要になることも少なくありません。
もし少しでもご不安な点があれば、お一人で悩まずに、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
葛葉法律事務所では、ご依頼者様の代理人として、他の相続人との交渉や遺産分割協議書の作成など、問題解決をサポートします。不動産を含む複雑な遺産分割は、ぜひ弁護士にご相談ください。
監修:葛葉法律事務所
