「話の通じない相続人」との膠着を破る。札幌の不動産を守るための「法的交渉」と「期限の壁」

「遺産分割の話をしようとしても、電話に出ない」
「実家に住み座り込み、『ここは俺の家だ』と言って聞かない」
「法外なハンコ代を要求し、手続きを人質に取られている」

札幌市内で不動産相続のご相談を受けていると、このような「理屈が通じない相続人」によって、手続きが完全にストップしてしまっているケースに頻繁に遭遇します 。

相手が話し合いに応じない以上、あなたがどれだけ誠意を持って説得しようとしても、それは時間の無駄に終わる可能性が高いです 。それどころか、近年の法改正(相続登記の義務化など)により、放置すること自体があなた自身への「罰則」につながるリスクさえ生じています 。

この記事では、これ以上話し合いが成立しない相手に対し、弁護士がどのように介入し、最新の法律に基づいた「最終通告」を行って事態を打開するのか、その具体的なステップを解説します 。


目次

1. 不動産相続を停滞させる「3つの壁」と法的リスク

「話が通じない」タイプによって、打つべき法的な手は異なります 。まずは相手がどのパターンに当てはまるか、そして放置した場合の法的リスクを確認しましょう 。

タイプ特徴・典型的な言動放置した場合の法的リスク
① 居座り型実家を占有し、「親の面倒を見た。ここは俺の家だ」と主張 。使用貸借の固定化:長期間放置すると、裁判所が「タダで住む権利(使用貸借)」を認め続ける傾向が強まり、立ち退きが困難になります 。
② 無視・逃亡型連絡を一切無視する、または行方をくらます 。過料(罰金):2024年の法改正により、相続登記を放置すると10万円以下の過料の対象となります 。
③ ゴネ得狙い型「ハンコが欲しければ500万円よこせ」と過大な要求をする 。主張権の消滅:2023年の法改正により、10年を過ぎると特別受益や寄与分の主張ができなくなります 。

2. 弁護士による「最終通告」|内容証明郵便が持つ本当の威力

弁護士にご依頼いただいた場合、最初に行うのが「内容証明郵便」による通知です 。

これは単なる手紙ではなく、膠着した「身内の揉め事」を、法的な解決プロセス(調停・審判)へと移行させるための「境界線」を引く行為です 。

弁護士名義の通知書が与えるインパクト

  • 「本気度」の伝達:弁護士名で届くことで、事態が深刻な法的紛争にフェーズが変わったことを認識させます 。
  • 法改正に基づいた「不利益」の提示:単なる感情論ではなく、「このままだとあなたが法律上これだけ損をする」という客観的事実を突きつけます 。
  • 証拠の保全:後の調停において、「こちらは誠実に協議を求めたが、相手が拒否した」という決定的な証拠となります 。

3. タイプ別:通知書で突きつける「最新の交渉カード」

近年の相次ぐ民法改正により、交渉の武器が増えています 。

対「居座り型」:遺産分割後の「損害金」リスクを通告

実家に同居していた相続人には、遺産分割までは無償で住む権利(使用貸借)が認められるケースが多く、直ちに家賃を請求するのは法的に難しいのが現実です(最高裁平成8年判決) 。

しかし、「遺産分割が成立した瞬間から、不法占有として高額な損害金を請求されるリスク」が発生します 。弁護士は、最終的には退去を命じられる未来の不利益を具体的に提示し、早期解決へのインセンティブを与えます 。

対「無視・逃亡型」:相続登記義務化による「過料」を通告

2024年4月より相続登記が義務化されました 。不動産取得を知ってから3年以内に登記を行わない場合、10万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります 。無視を決め込んでいる相手に対し、「国からのペナルティ」を警告することは強力な圧力となります 。

対「ゴネ得狙い型」:10年ルールによる「権利消滅」を通告

2023年4月施行の改正民法により、相続開始から10年を経過すると、原則として「特別受益(生前贈与)」や「寄与分(介護の苦労など)」の主張ができなくなりました 。不当な引き伸ばしを図る相手には、主張が一切認められなくなる「タイムリミット」を突きつけます 。


4. それでも動かない相手へ|調停・審判という「強制力」の行使

内容証明郵便でも態度を改めない場合は、家庭裁判所の手続きへ移行します 。

  1. 遺産分割調停:裁判所の調停委員が間に入ります 。相手が欠席を続ければ、自動的に「審判」へ移行します 。
  2. 遺産分割審判:裁判官が「遺産をこのように分けなさい」と命令を下します 。審判書があれば、相手の協力(ハンコ)なしで預貯金や不動産の処分等の相続手続が可能になります 。
  3. 強制執行:審判確定後も退去しない場合、国の権力を使って強制的に退去させる手続きも視野に入ります 。

5. 【札幌特有のリスク】冬を越す前に決着をつけるべき理由

特に札幌の不動産に関しては、悠長に構えている時間はありません 。

  • 「所有者責任」は連帯して負う(雪害リスク)
    屋根からの落雪で通行人に怪我をさせた場合、建物の所有者全員が損害賠償責任を負います(民法717条) 。遺産分割が済んでいない以上、あなたも共有者の一人として、数千万円の賠償責任を負うリスクがあるのです 。
  • 「特定空家」指定と行政代執行のリスク
    倒壊の恐れがある空き家は札幌市から「特定空家」に指定される可能性があり、固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。さらに行政による強制解体が行われた場合、その費用(数百万円〜)は相続人全員に請求されます。

まとめ:大切な不動産を「負動産」にしないために

「話が通じない相続人」に対して、個人の力で立ち向かうには限界があります 。しかし、法改正により、「逃げ得」や「ゴネ得」を許さない仕組みが整いつつあります 。

弁護士にご依頼いただければ、相手との直接連絡をすべて絶ち、精神的負担を解消した上で、最新の法的カードを駆使して膠着した事態を動かします 。

これ以上、理不尽な相手に振り回されるのは終わりにしましょう。

冬が来る前に、そして法の期限(時効)が来る前に、まずは一度お問い合わせください 。


この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。弁護士歴約20年。
【メディア掲載歴】
・「法律事務所ガイドブック2013 頼れる身近な弁護士」(游学社)
・「財界さっぽろ」2021年12月号・特集記事【成功する経営者は士業を使う】
・「anan」2038号・特集記事【仕事も私生活も、身近な「困った」に頼れる!法律のエキスパート】

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