親の預金が使い込まれた?時効は最短5年!使途不明金の調査と取り戻し全手順【2026年最新版・弁護士監修】
「親が亡くなり、遺産分割のために通帳を確認したら、不明な高額出金が繰り返されていた」
「同居していた兄弟が、親の預金を勝手に引き出していた疑いがある」
相続の場面で、こうした**使途不明金(使い込み)**の問題は非常に多く発生します。
しかし、「家族の問題だから」と感情的に問い詰めたり、逆に「10年は時効にならないから大丈夫」と誤った知識で放置したりするのは非常に危険です。
実は、2020年の民法改正により、使い込みのお金を取り戻せる期間(時効)が「最短5年」に短縮されているケースがあります。
この記事では、最新の法律に基づいた使途不明金の調査方法から、弁護士がどのように介入して解決に導くか、そして実際にお金を取り戻すための手順を解説します。
その出金は本当に「使途不明金」?まずは事実確認から
「使い込みだ!」と相手を追及する前に、まずは客観的な資料を集める必要があります。
誰が、いつ、いくら引き出したのかを特定しなければ、法的に返還を求めることはできません。
1. 金融機関から「取引履歴」を取り寄せる
最初に行うべきは、親名義のすべての口座について、過去の取引履歴を開示請求することです。
かつては銀行が「相続人全員の同意が必要」と開示を拒否するケースもありましたが、現在は最高裁判決(平成21年1月22日)により、相続人は単独で取引履歴の開示を請求できる権利が確定しています。
もし窓口で断られそうになった場合は、「判例により単独での請求権が認められているはずだ」と主張して問題ありません。
【開示請求に必要な主な書類】
- 被相続人(親)の除籍謄本
- 請求者(あなた)の戸籍謄本
- 請求者の印鑑証明書
- 本人確認書類(免許証など)※金融機関によって必要書類が異なる場合があるため、事前に電話で確認することをお勧めします。
2. 取引履歴と「医療・介護記録」を照らし合わせる
取り寄せた履歴を見て、以下のような不自然な動きがないかを確認します。
- ATMでの頻繁な引き出し (1日限度額いっぱいの日が続いているなど)
- 高額な窓口出金 (数百万円単位の出金など)
- 使途不明な振込 (親と関係のない個人や会社への送金)
ここで最も重要なのが、「時期的な矛盾」の確認です。
不自然な出金があった日、親はどのような状態でしたか?
もし、「入院中で外出できない状態」や「認知症が進み、暗証番号を管理できる状態ではなかった」のであれば、それは第三者による無断引き出しの強力な証拠となります。
そのため、取引履歴と同時に、以下の資料も早急に確保してください。
- 医療機関のカルテ・入院記録
- 入所していた施設の介護記録・外出記録
弁護士はどうやって調査する?プロの調査手法
個人で調べられる範囲には限界があります。
特に、「引き出された現金がどこへ行ったか」や「誰が窓口に来たか」を特定するには、弁護士の介入が不可欠です。
弁護士会照会(23条照会)の活用と限界
弁護士法第23条の2に基づく照会制度を利用することで、金融機関や関係各所に対して情報の開示を求めることができます。ただし、何でも分かる「魔法の杖」ではない点に注意が必要です。
【調査で分かること・分からないこと】
| 調査対象 | 調査の実情と注意点 |
| 払戻請求書の筆跡 | 有効 窓口で出金した際の伝票を取り寄せます。明らかに親の筆跡と異なる場合、筆跡鑑定によって「他人が書いた」ことを立証できる可能性があります。 |
| ATMの防犯カメラ | 困難な場合が多い 金融機関の防犯カメラの保存期間は、一般的に1ヶ月〜3ヶ月程度と極めて短期間です。相続発生後に調査を始めても、すでに映像が消去されているケースが大半です。 |
| 振込先の情報 | 条件付きで有効 使途不明金が特定の口座へ振り込まれている場合、その口座名義人を調査します。ただし、金融機関によっては個人情報保護を理由に回答を拒否することもあります。 |
このように、防犯カメラの映像等の「直接的な証拠」が残っていない場合でも、弁護士は諦めません。
「入院記録」や「筆跡」、「当時の親の生活状況(高額な現金が必要だったか)」などの間接証拠を積み上げ、裁判官に「これは本人の意思ではない」と確信させるだけの証拠構造を構築します。
使い込みが確定した場合のお金の取り戻し方
調査の結果、特定の相続人による使い込みが明らかになった場合、そのお金を取り戻すための法的手続きは大きく分けて2つのルートがあります。
方法1:遺産分割協議での話し合い(家庭裁判所)
相続人全員での話し合い(遺産分割協議)の中で、使い込み分を「特別受益」や「生前贈与」として持ち戻し、その分を差し引いて遺産を分ける方法です。
相手が使い込みを認めれば、早期かつ低コストでの解決が可能です。調停委員を交えた遺産分割調停で合意を目指すこともあります。
方法2:不当利得返還請求訴訟(地方裁判所)
相手が「親のために使った」「頼まれて引き出した」と言い張り、使い込みを認めない場合、原則として遺産分割の話し合いでは解決できません。
この場合、地方裁判所にて「不当利得返還請求訴訟」(または不法行為に基づく損害賠償請求訴訟)を起こす必要があります。
これは「法律上の原因なく利益を得ているため、返還せよ」と求める手続きであり、厳密な証拠に基づく法廷闘争となります。
【解決手段の比較】
| 手続き | メリット | デメリット | 解決までの期間目安 |
| 当事者間交渉 | 費用がかからず、早期解決が可能。 | 感情的になりやすく、決裂しやすい。 | 1ヶ月〜3ヶ月 |
| 遺産分割調停 | 調停委員が間に入るため冷静に話せる。 柔軟な解決が可能。 | 相手が認めなければ解決しない。 (使途不明金は原則、訴訟事項のため) | 半年〜1年 |
| 民事訴訟 | 判決により強制的な解決が可能。 | 厳密な証拠が必要。 時間と費用がかかる。 | 1年〜2年 |
「いくら取り戻せるか」と弁護士費用の考え方
使途不明金問題で最も気になるのは、「いくら戻ってくるのか」という点でしょう。
ここでは、計算式とあわせて、法改正による重要な変更点について解説します。
回収できる金額の計算式
裁判で請求できる金額は、原則として「使い込まれた金額の全額」ではありません。
あくまで、あなたの相続分に相当する金額が請求の上限となります。
請求額 = 使い込まれた金額× あなたの法定相続分
例えば、1,000万円の使い込みがあり、相続人が兄(使い込み本人)と弟(あなた)の2名(相続分各1/2)の場合、あなたが法的に請求できるのは500万円となります。
【重要】法改正による利息(遅延損害金)の変動
使い込まれた元本に加えて、引き出し時からの「遅延損害金(利息)」を請求できます。
この利息の利率について、2020年4月1日の民法改正により大きな変更がありました。
- 2020年3月31日以前の使い込み:年5%
- 2020年4月1日以降の使い込み:年3%(変動制)
いつ行われた使い込みかによって、適用される法律が異なります。
長期間にわたって使い込みが行われている場合、計算が複雑になりますので、弁護士による正確な計算が必要です。
まとめと次のステップ:時効の壁に注意!
最後に、最も注意すべき点をお伝えします。それは「消滅時効」です。
2020年の民法改正により、不当利得返還請求権(使い込みを取り戻す権利)の時効ルールが変わりました。
- 権利を行使することができることを知った時から5年
- 権利を行使することができる時から10年
改正法の適用を受けるケース(2020年4月1日以降の行為)では、「使い込みの事実」と「誰がやったか」を知ってから5年が経過すると、時効により請求できなくなる可能性があります。
「10年は大丈夫」という古い情報のまま放置していると、取り返しがつかなくなる恐れがあります。
親の預貯金の使い込み疑惑は、時間が経てば経つほど、証拠(防犯カメラ映像や記憶)が消え、時効のリスクも高まります。
もし少しでもご不安な点があれば、お一人で悩まずに、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
葛葉法律事務所では、初回相談を無料で承っております。
時効の成否や、証拠の確保について、あなたのお悩みに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。
