裁判の尋問手続について

 裁判というと、どんなイメージが真っ先に思い浮かぶでしょうか。
 おそらく大多数の人が、誰かが証言台の前に立って裁判官に向かって何か話しているシーンを思い浮かべるのではないかと思います。

 裁判で人が証言台に立って話をする手続のことを「尋問」といいます。
 民事裁判でも刑事裁判でも尋問は実施されますが、ここでは民事裁判の尋問について簡単にご説明します。

①尋問が行われるのは終盤
 民事裁判では、尋問を行うのは裁判の終盤になってからです。
 逆に言うと、尋問を行うということは、もう裁判は残すところ後わずか、判決言渡しがあるくらいという状態になっています。
 したがって、裁判が始まってすぐに尋問を実施するということは、まずありません。

②尋問時の注意事項
 尋問を受けて証言をする人のことを「証人」といいます。
 また、原告や被告が尋問を受ける場合もあり、その場合には証人ではなく「本人」といいます。民事裁判では、原告本人と被告本人は基本的に尋問を実施することになるので、裁判を起こす・起こされた場合は、高確率でいずれ尋問を受けることになります。
 当事務所では、尋問を受ける方に以下のようなご案内をしております。

③尋問後に和解の協議
 尋問が終わった後は基本的には判決を言い渡すだけという状態になるのですが、その段階になって裁判官から和解による解決を打診されることが良くあります。
 これは、判決の直前まで来ているので裁判官としては心証がほぼ固まっており、「判決になったら大体こういう内容になるよ、でも和解でもう少し柔軟に解決してみてはどうだろうか」といった理由によるものです。
 また、原告や被告にとっても、裁判の途中だと勝つか負けるかわからず落しどころを見つけあぐねて和解が難しかったのが、尋問後になれば判決の内容が概ね予想できる(裁判官からも説明される)ので、現実的な路線で落しどころを探りやすくなるという理由もあります。

 こんな感じでしょうか。
 尋問は、ほぼ全ての裁判で行われることになりますが、実施するのは裁判の終盤であるため、その前に和解で解決すれば尋問せずに裁判は終了します。そのため、「尋問をしたくないからその前に和解する」というケースもあります。
 裁判の進行を考える際には、尋問を視野に入れて戦略を練るのが必要不可欠になります。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

目次