債権回収会社からの請求に用心すべきポイント

 貸金業法の改正などによって多重債務の問題はかなり改善されてきたように思われますが、最近になって新たな問題が浮上しているようです。
 すこし前から全国の弁護士間のメーリングリストで、悪質な債権回収業者による被害報告がちらちらとなされるようになっていました。それを見て、なんとなく西日本に集中している様子だったので、まだ札幌ではそういうことにはなってないんだろうなあと思っていましたが、とうとう先日、うちにもご相談がありました。

 「債権回収会社」というのは、他社の債権を譲り受けて取立てを行うことを専門とする会社です。他社から回収業務の委託のみを受けて行う場合もあります。
 そのうちの一部の業者が、返済が滞っている債権を大量にしかも極めて廉価で買い付けて、債務者に取り立てをしているようです。返済が滞っている債権は不良債権ですから、普通なら誰も買い取ろうとは思いません。しかし、そういう業者は、不良債権を大量にかつ低額で買い付けて、不良債権のうちほんの少しでも回収できれば利益が出るようにしているのです。
 例えば、不良債権が100件あって、1件当たりの債権額が100万円とすると、債権総額は1億円になりますが、債権回収会社が買い付ける値段は全体で10万円くらいです。そして、100人の債務者のうち1人でもいいので無理くり資金を用意させて100万円返済させれば、90万円の利益が生まれるわけです(実際には債権回収会社の人件費等がかかるため、そう単純ではありませんが)。

 しかし、不良債権は長年にわたり不払いとなっているものがほとんどなので、もう時効によって消滅したといえるようなものもあったりします。それにもかかわらず、そのようなことはお構いなしに取立てを行い、債務者の無知に乗じて消滅時効をいえないようにして、無理にでも支払わせようとする事例が出てきています。
 さらに悪質な業者になると、自己破産を行って裁判所から債務を免除されたにもかかわらず、免除された債権を譲り受けて元債務者に請求し、支払いをさせるというものまであるとかないとか。ここまでいくと、サラ金業者の取立てによって自殺に追い込まれた事件を彷彿とさせるものがあります。
 このような債権回収会社からの請求に対しては、適切な対応をしないと、取り返しのつかないことになりかねません。とりあえずは請求書が届いてもすぐに返事はせず、電話がきても「今はちょっとよく分かりません」などとお茶を濁しつつ(決して「いつか払いますので待って下さい」などと返事してはいけません)、弁護士にご相談頂ければと思います。

 貸金業法だけでなく、悪質な債権回収会社を取り締まるための法改正も必要ではないかなあ、そういう業者は下手な鉄砲数打ちゃ当たるの理論でやってるだけだろうから保護する必要性も低いのではないかなあ、などと思う今日この頃です。 

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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