【2025年最新版】遺産分割で揉めたら?札幌の弁護士が解説する「遺産分割調停」の全て
「遺産の分け方で、他の相続人と意見が全く合わない」
「特定の相続人が財産を独り占めしようとして、話し合いにならない」
「感情的な対立が激しく、冷静な交渉ができない」
残念ながら、遺産相続において、こうしたトラブルは決して珍しくありません。当事者同士での解決が困難になった場合、次のステップとして検討すべきなのが、家庭裁判所を利用した「遺産分割調停」です。
この記事では、札幌市およびその近郊にお住まいの方向けに、遺産分割で揉めてしまった際の法的な解決手段である「遺産分割調停」について、最新の法改正の内容も踏まえながら、その流れや費用、解決までの期間、そして専門家だけが知る重要なポイントを、弁護士が分かりやすく解説します。
遺産分割調停とは?話し合いで解決を目指す裁判所の手続き
遺産分割調停とは、裁判官と、公平・中立な「調停委員」が間に入ることで、相続人全員が納得できる合意を目指して話し合いを進める裁判所の手続きです。あくまで「話し合い」での解決を目指す点が、裁判官が一方的に結論を下す「審判」や「訴訟」とは大きく異なります。
調停委員は、法律家を含む、社会経験豊かな有識者の中から裁判所によって任命された、公平・中立な立場の非常勤の裁判所職員です。
調停を利用するメリット
- 中立な第三者が間に入る: 感情的になりがちな当事者同士の話し合いに、法律の知識と社会経験が豊富な調停委員が入ることで、冷静かつ客観的な議論がしやすくなります。
- 相手と顔を合わせずに済む: 調停は、原則として相続人が個別に調停委員と話をする形式で進められます。相手と直接顔を合わせる必要がないため、精神的な負担が軽減されます。
- 非公開で行われる: 手続きは完全に非公開で行われるため、プライバシーが守られます。
- 法的な強制力を持つ「調停調書」: 話し合いがまとまると、その合意内容を記した「調停調書」が作成されます。これは、裁判所の判決書と同様に、不動産の所有権移転登記や預貯金の解約・名義変更手続きにおける公的な証明書として使用できる、法的な強制執行力を有する公文書です。
【要注意】2023年法改正!遺産分割は10年がタイムリミットに?
本題に入る前に、近年の相続法改正で最も重要な「期間制限」について解説します。問題を先送りにしていると、あなたの正当な権利が失われてしまう可能性があります。
なぜ法改正が必要だったのか
長期間放置された不動産が「所有者不明土地」となり、社会問題化していることが背景にあります。遺産分割を促進し、所有者不明土地の発生を予防する目的で、新しいルールが設けられました。
新しいルール(改正民法第904条の3)
「相続開始(被相続人の死亡)から10年が経過すると、原則として、遺産分割は法定相続分(または遺言による指定相続分)で行う」というルールが2023年4月1日から施行されました。
これにより、「特別受益」(生前の多額の贈与など)や「寄与分」(親の介護など特別な貢献)の主張が、相続開始から10年を過ぎると原則として認められなくなります。
例えば、ご兄弟の一人が親から住宅購入資金として2,000万円の援助を受けていたとしても、親の死後10年以上が経過してしまうと、その不公平を是正するための「特別受益」の主張ができなくなる可能性があるのです。
例外と経過措置
ただし、以下のような例外があります。
- 10年経過前に家庭裁判所に調停等を申し立てていた場合
- 相続人全員が「特別受益」や「寄与分」を考慮した分割に合意した場合
また、法改正前に発生した相続については、少なくとも2028年3月31日までの「5年間の猶予期間」が設けられています。心当たりのある方は、早急に専門家へ相談することをお勧めします。
【札幌版】遺産分割調停の具体的な流れ 5つのステップ
札幌で遺産分割調停を行う場合、手続きは以下の流れで進みます。
ステップ1:家庭裁判所への申立て
まず、必要書類を揃えて、管轄の家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行います。
申立先(管轄)の【重要】注意点
- 調停の管轄: 原則として「相手方(他の相続人)のうちの一人の住所地」、または「当事者が合意で定めた家庭裁判所」です。例えば、相手方が札幌市在住であれば、札幌家庭裁判所に申し立てます。
- 審判の管轄: もし調停が不成立となり、後述する「審判」に移行した場合、管轄は原則として「被相続人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所となります。
例えば、被相続人が函館市、相手方相続人が札幌市に住んでいる場合、調停は札幌家庭裁判所でできますが、不成立で審判になると、事件が函館家庭裁判所に移される可能性があります。この点は手続きの見通しを立てる上で非常に重要です。
必要書類一覧(札幌家庭裁判所 実務対応版)
札幌家庭裁判所での申立てには、主に以下の書類が必要です。
| 項目 | 内容・注意点 |
| 申立書 | 正本1通、及び相手方全員分の副本(写し) |
| 当事者目録・遺産目録 | 申立書に添付。財産は正確に記載する必要があります。 |
| 相続関係説明図 | 被相続人と相続人全員の関係を図示したもの |
| 被相続人の戸籍謄本等 | 出生から死亡までの連続した全ての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 現在の戸籍謄本 |
| 被相続人の住民票の除票等 | 最後の住所地を証明する住民票の除票または戸籍の附票 |
| 相続人全員の住民票等 | 現在の住民票または戸籍の附票 |
| 遺産に関する資料 | 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券の残高報告書、生命保険証券の写し等 |
| 【重要】事情説明書(遺産分割) | 札幌家庭裁判所が指定する書式。申立てに至る経緯や争点を記載します。原則相手方には送付されませんが、閲覧の対象にはなります。 |
| 遺言書の写し(ある場合) | 公正証書遺言以外は、家庭裁判所での「検認」手続きが必要な場合があります。 |
ステップ2:第1回調停期日の決定・呼び出し
申立てが受理されると、裁判所が第1回目の調停を行う日時(調停期日)を決定し、すべての相続人に対して「呼出状」を郵送します。申立てから約1ヶ月~2ヶ月後が目安です。
ステップ3:調停期日での話し合い
当日は、申立人と相手方が別々の待合室で待機し、時間になると交互に調停室に呼ばれ、調停委員に自分の主張や希望を伝えます。
近年では、遠隔地に居住する当事者のために、裁判所の判断により電話会議システムやウェブ会議システムを利用できる場合があります。ただし、必ずしも利用が許可されるわけではないため、事前の確認が必要です。
ステップ4:複数回の調停(1ヶ月に1回程度)
1回で話がまとまることは稀で、通常は1ヶ月に1回程度のペースで、複数回調停期日が開かれます。
ステップ5:調停の成立または不成立
調停成立
全員が合意に至れば、調停成立です。裁判官が合意内容を読み上げ、全員で確認し、「調停調書」が作成されます。
【最重要】調停不成立(不調)の場合
話し合いを続けても合意の見込みがないと判断されると、調停は不成立(不調)として終了します。
原則として、手続きは自動的に「遺産分割審判」へと移行し、最終的には裁判官が遺産の分割方法を決定することになります。
しかし、これには重大な例外があります。
相続人間の争いが単なる「分け方」に留まらず、遺産分割の前提となる事柄に及んでいる場合、調停は不成立ではなく取り下げるように勧告されることがあり、審判には移行しません。 この場合、別途、地方裁判所等で民事訴訟を提起して、まず前提問題を解決する必要が生じます。
【前提問題の具体例】
- 遺産の範囲に関する争い: 「この預金は被相続人のものではなく、名義を借りていただけだ」といった主張がある場合。
- 相続人の範囲に関する争い: 「養子縁組は無効だ」「認知された子だが、血縁関係がない」といった、誰が相続人かについての争いがある場合。
- 遺言の有効性に関する争い: 遺言書そのものの有効性が争われている場合。
この場合、「調停→訴訟→(訴訟の確定後)→再度、遺産分割調停」という、長く複雑な道のりを辿る可能性があります。ご自身の状況がどれに当たるか、専門家による正確な見極めが不可欠です。
遺産分割調停にかかる費用と期間
費用
調停を申し立てる際には、以下の実費が必要です。弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が必要となります。
| 費用の種類 | 金額(目安) |
| 収入印紙 | 被相続人1人につき 1,200円 |
| 連絡用の郵便切手 | 札幌家庭裁判所が指定する金額。相手方の人数に応じて増加します(相手方1名につき約800円~1,000円が基本)。 |
| 書類取得費用 | 戸籍謄本(1通450円)、登記事項証明書(1通600円)など、事案により総額で数千円から数万円程度。 |
期間
最高裁判所が公表している司法統計によれば、遺産分割調停事件の多くは1年以内に終結しています。しかし、争点が多かったり、財産調査に時間がかかったり、当事者の対立が深刻であったりする場合には、2年から3年、あるいはそれ以上を要するケースも決して少なくありません。
専門家だからこそ知っている!調停を有利に進めるための知識
遺産分割調停では、法律で定められた制度をうまく活用することで、ご自身の権利を守ることができます。
調停中の生活費が心配な方へ「遺産の仮分割の仮処分」
調停中は被相続人名義の預貯金口座が凍結され、引き出しができません。被相続人の年金で生活していた配偶者など、当面の生活費に困窮するケースがあります。
このような場合、「遺産の仮分割の仮処分」という手続きを裁判所に申し立てることで、調停の成立を待たずに、遺産である預貯金の一部を仮に受け取ることができる可能性があります。この申立てには、生活に困窮しているといった「必要性」が認められる必要があります。
配偶者の住まいを守る「配偶者居住権」
2020年4月1日に施行された改正民法で創設された「配偶者居住権」は、残された配偶者の居住を守るための重要な権利です。
これは、被相続人が所有していた建物に住んでいた配偶者が、その建物の所有権を相続しなくても、終身または一定期間、無償で住み続けることができる権利です。この権利は、遺産分割調停における相続人間の合意によって設定することが可能です。「住む権利」と「所有権」を分離することで、配偶者の居住を確保しつつ、他の財産も含めた柔軟な分割協議を進める一助となります。
遺産分割調停を弁護士に依頼する5つのメリット
遺産分割調停はご自身で進めることも可能ですが、法律の専門家である弁護士に依頼することで、多くのメリットが得られます。
- 複雑な申立手続きをすべて任せられる膨大な戸籍謄本の収集や、正確な遺産目録の作成など、非常に手間のかかる準備をすべて代行し、スムーズに申立てを行うことができます。
- 法的根拠に基づき、主張を論理的に構成できる調停の場では、ご自身の希望をただ伝えるだけでなく、法律的な根拠(法定相続分、寄与分、特別受益など)に基づいて論理的に主張することが重要です。弁護士は、ご依頼者様の状況を法的に分析し、主張を的確に構成します。
- 調停期日に同席・代理出席してもらえる「裁判所という場所に一人で行くのは不安」という方でも、弁護士が期日に同席することで、安心して手続きに臨むことができます。また、弁護士が代理人として出席することも可能です。
- 交渉の窓口となり、精神的負担を軽減できる弁護士が窓口となることで、相手方と直接やり取りする必要がなくなり、精神的なストレスが大幅に軽減されます。また、調停委員に対しても、冷静かつ客観的に交渉を進め、ご依頼者様の正当な権利の実現を目指します。
- 最新の法改正へ的確に対応できる相続法は近年、重要な改正が続いています。特に前述の「10年の期間制限」は、ご自身の権利に直結する極めて重要なルールです。弁護士は、こうした最新の法改正の内容を正確に把握し、ご依頼者様の権利が時の経過によって失われることのないよう、適切な手続きを選択し、実行します。
まとめと次のステップ
遺産分割で揉めてしまい、当事者同士での解決が難しいと感じたら、家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用することが、有効な解決策となります。
この記事で解説した内容は、専門的な知見を多く含みますが、それでもなお一般的なケースに過ぎません。個別の状況によっては、より複雑な手続きや判断が必要になることも少なくありません。
もし少しでもご不安な点があれば、お一人で悩まずに、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
