最高裁判所の期日の進め方

 最高裁判所とは、いうまでもなく日本の裁判所の頂点にある裁判所です。
 しかし、実は裁判のために最高裁判所に出廷するということは、長年弁護士をやっていてもなかなかありません。というか、出廷したことのない弁護士の方が圧倒的多数でしょう。
 これはどういうことかといいますと、最高裁判所で審理を行うケースは非常に限定されており、最高裁判所での審理を求めても三行半を返されるケースが大半だからという事情によります。この三行半を返されるケースでは、最高裁判所に出廷するまでもなく文書で通知がなされるだけのため、弁護士が最高裁判所に出廷することはないのです。

 そんな滅多に行くことのない場所に一度だけ出廷したことがありますが、最高裁判所での期日の進め方は非常に独特でした。

 まず、裁判所の敷地に入るのに、決まった時間に来るように言われます。遅れるのが駄目なのは無論のこと、早く来すぎてもいけない(敷地内に入れてもらえない)のです。さらに最高裁判所の正門からは入れず、裏口?から入るように指示されました。

 建物内に入ると職員に待合室のような部屋に案内され、開廷の時間まで待機するように指示されます。開廷時間が近づくと、再び職員に案内されて法廷に移ります。
 そして、法廷に入って着席してから驚いたことに、職員の人から予め訴訟の進行について、どのように発言するかも含めて指示されます。

 ここまで来ると、なんだかセレモニーみたいだなあと思いました。地方裁判所や高等裁判所の裁判期日も、事前に提出した準備書面を確認する程度のことがほとんどで、「口頭弁論の形骸化」などと揶揄されていたこともあったようですが、それでも内容について協議することも多く、期日に口頭で協議するということを見越して準備書面を作成することもあります。しかし、最高裁判所ではそのようなことすらできない状況でした。

 まあ、私がこれまで最高裁判所に行ったのはその商事事件の期日の1回きりなので、もしかしたら他の事件では違った進行があるのかもしれません。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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