相続人は誰?【札幌版】最新制度対応!戸籍収集から手続きまで完全ガイド
ご家族が亡くなられた後、預貯金の解約や不動産の名義変更といった相続手続きを進めようとすると、金融機関や法務局から必ず「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて揃えてください」と言われます。
「なぜそんなにたくさんの戸籍が必要なの?」
「札幌では、どうやって集めたらいいの?」
多くの方がこの「戸籍収集」の段階でつまずき、相続手続きが前に進まなくなってしまいます。
この記事では、札幌市にお住まいの方向けに、最新の法制度(2024年3月開始の広域交付制度など)を踏まえ、相続人を正確に確定させるための戸籍収集の全知識と、手続きを劇的に効率化する「法定相続情報証明制度」について、弁護士が分かりやすく解説します。
なぜ「出生から死亡まで」の戸籍謄本が必要不可欠なのか?
相続手続きにおいて、なぜ被相続人(亡くなった方)の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本が必要なのでしょうか。
それは、法的に有効な遺産分割協議を行うために、参加すべき当事者を一人残らず確定させるためです。
隠れた相続人の存在
人は結婚、離婚、養子縁組などで籍を移すため、最新の戸籍謄本だけを見ても、すべての身分関係が分かるとは限りません。
- 過去に離婚した配偶者との間に子供がいる
- 認知している子供がいる
- 普通養子縁組をした子供がいる
これらの事実は、出生まで戸籍を遡って初めて判明することがあります 。もし、こうした相続人の存在に気づかずに手続きを進めてしまうと、後から遺産分割協議が無効になるという深刻な事態を招きます。
遺産分割協議が無効になるリスク
遺産分割協議は、参加すべき当事者全員の合意がなければ法的に無効です。一人でも当事者が欠けた状態で作成した遺産分割協議書は、何の効力も持ちません。
民法では、誰が法的な相続人(法定相続人)となるかについて、配偶者は常に相続人となり、それに加えて子(第一順位)、父母(第二順位)、兄弟姉妹(第三順位)という厳格な順位が定められています。戸籍を出生まで遡ることで、これらの法定相続人全員を確定させることが目的です。
さらに注意すべきは、法律上、遺産分割協議への参加が求められるのは法定相続人だけに限らない点です。例えば、遺言で財産の一定割合を受け取る「包括受遺者」や、相続人が未成年者である場合の「特別代理人」、相続分を譲り受けた「相続分の譲受人」なども、協議に加わらなければなりません。これらの関係者を一人でも欠いた協議は無効となるため、専門家による正確な相続人調査が極めて重要になるのです。
表1: 法定相続人と法定相続分
| 相続人の組み合わせ | 配偶者 | 子 | 直系尊属 (父母等) | 兄弟姉妹 |
| 配偶者 と 子 | 1/2 | 1/2 (全員で) | – | – |
| 配偶者 と 直系尊属 | 2/3 | – | 1/3 (全員で) | – |
| 配偶者 と 兄弟姉妹 | 3/4 | – | – | 1/4 (全員で) |
| 子 のみ | – | 全て | – | – |
| 直系尊属 のみ | – | – | 全て | – |
| 兄弟姉妹 のみ | – | – | – | 全て |
ステップ解説|札幌で相続人調査に必要な戸籍謄本を集める方法
戸籍を遡って集める作業は、基本的に以下の3ステップで行います。
- ステップ1:最新の戸籍謄本(除籍謄本)を札幌市の窓口で取得するまずは、被相続人の最後の本籍地の役所で、最新の戸籍謄本(被相続人が亡くなったことにより誰もいなくなった戸籍は「除籍謄本」となります)を取得します。
- ステップ2:戸籍を遡って一つ前の本籍地を確認する取得した戸籍謄本には、「従前戸籍」や「編製」「転籍」といった記載があります。ここに、一つ前の本籍地が書かれていますので、それを読み取ります。
- ステップ3:一つ前の本籍地の役所に請求…を繰り返す次に、ステップ2で判明した市区町村の役所に対して、戸籍謄本を請求します。この作業を、被相続人が生まれた時点の戸籍にたどり着くまで繰り返します。
【コラム】戸籍収集における実務上の注意点
- 古い戸籍の判読: 明治・大正・昭和初期の戸籍は、旧字体や崩し字を用いた手書きであり、判読には専門的な知識と経験を要する場合があります。
- 戸籍の不連続・滅失: 戦災や火災等で役所の戸籍が「滅失」していたり、転籍手続きの不備で戸籍が途切れていたりするケースも稀にあります。
- 法改正による様式変更: 戸籍は法改正により何度も様式が変更されています(例:昭和32年式、平成6年式(コンピュータ化))。様式が変わる際に、以前の戸籍(改製原戸籍)に記載されていた情報の一部が新しい戸籍に引き継がれないことがあるため、全ての種類の戸籍を漏れなく集める必要があります。
これらの点で調査が行き詰まった場合は、無理に進めずに専門家にご相談ください。
「改製原戸籍」や「除籍謄本」とは?戸籍を遡る際のポイント
戸籍を遡っていくと、「改製原戸籍(かいせいげんこせき)」や「除籍謄本」といった、見慣れない戸籍が出てきます。
| 戸籍の種類 | 読み方 | 意味 |
| 戸籍謄本 | こせきとうほん | 現在有効な戸籍の全部事項証明。 |
| 除籍謄本 | じょせきとうほん | 結婚、死亡、転籍などにより、戸籍に記載されている人が誰もいなくなった状態の戸籍。 |
| 改製原戸籍 | かいせいげんこせき | 法律の改正によって戸籍の様式が作り替えられる前の、古い様式の戸籍。特に重要なのは、戸籍が作り替えられる際に、以前の配偶者との間の子や認知した子などの情報が新しい戸籍には転記されないことがある点です。そのため、相続人を一人残らず確定させるには、改製原戸籍の確認が不可欠となります。 |
札幌市での戸籍謄本の請求方法【窓口・郵送・広域交付】
札幌市内に本籍がある方の戸籍謄本は、以下の方法で取得できます。
請求窓口一覧(札幌市)
札幌市内にお住まいの方であれば、直接窓口へ行くのが最も早いです。札幌市では、どの区の区役所でも、市内に本籍がある方の戸籍謄本を取得できます。
| 請求窓口 | 特徴 |
| 各区役所 戸籍住民課 | 札幌市内10区のいずれの区役所でも請求可能です。 |
| 大通証明サービスコーナー | 地下鉄大通駅にあり、平日夜間(20時まで)や土日も開庁しているため便利です。 |
郵送で請求する場合
本籍地が札幌市外の遠隔地にある場合や、平日に窓口へ行けない場合は、郵送で請求します。札幌市への郵送請求は、2022年9月から「札幌市証明郵送センター」に集約されています。
- 送付先: 〒060-8507 札幌市証明郵送センター (この個別郵便番号の記載により、所在地の記載は不要です)
- 必要なもの: 請求書、手数料(定額小為替)、返信用封筒、本人確認書類のコピーなどが必要です。詳細は札幌市のウェブサイトでご確認ください。
【重要】2024年3月開始「戸籍の広域交付制度」の正しい使い方と限界
2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍謄本等を請求できる「広域交付制度」が始まりました。これにより、札幌市の窓口で遠隔地の戸籍もまとめて取得できるため、ご自身で手続きを進める際の負担が軽減される場合があります。
しかし、この便利な制度には厳しい利用条件があり、万能ではありません。以下の重要な制約を必ずご確認ください。
- 請求できる方: 請求できるのは、ご本人、配偶者、父母・祖父母(直系尊属)、子・孫(直系卑属)のみです。ご兄弟姉妹の戸籍は請求できません。
- 請求方法: 請求者ご本人が市区町村の窓口に直接出向く必要があります。郵送や、弁護士・司法書士など専門家を含む代理人による請求は一切認められていません。
- 必須の本人確認書類: 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど、官公署発行の顔写真付き身分証明書の提示が必須です。健康保険証などでは請求できません。
- 対象書類の限定: 取得できるのは戸籍謄本・除籍謄本のみです。戸籍抄本や、住所の履歴を証明する戸籍の附票などは対象外です。
- 発行時間: 複数の戸籍を遡って請求する場合など、システムの確認に時間を要し、発行が後日になる可能性があります。その際は再度窓口へ出向く必要があります。
このように、広域交付はご自身で動ける範囲の戸籍収集には役立ちますが、お忙しい方や、兄弟姉妹の戸籍が必要な場合、手続き全体を専門家に任せたい場合には適していません。
相続手続きの決定版!「法定相続情報証明制度」を最大限に活用する
戸籍収集の煩雑さを解消するために国が2017年に創設した、非常に強力な制度が「法定相続情報証明制度」です。これこそが、現代の相続手続きにおける最も効率的な選択肢と言えます。
制度の概要
「法定相続情報証明制度」とは、一度、収集した戸籍謄本一式と自ら作成した相続関係一覧図を法務局に提出することで、登記官がその内容を認証し、相続関係を公的に証明する「法定相続情報一覧図の写し」を発行してくれる制度です。
絶大なメリット
- ① これ1枚が戸籍謄本一式の代わりになる法務局の認証印が入った「一覧図の写し」は、その後の不動産登記、預貯金の解約・名義変更、有価証券の移管、相続税の申告など、様々な相続手続きにおいて、あの分厚い戸籍謄本の束の代わりに提出できます。
- ② 手続きの同時並行で時間短縮「一覧図の写し」は無料で必要な通数を交付してもらえます。これにより、法務局、銀行A、銀行B、証券会社での手続きを同時に進めることが可能となり、相続手続き全体の期間を劇的に短縮できます。戸籍原本の返却を待つ必要がありません。
利用手続きの概要
- 必要書類の収集: まず一度だけ、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等と、相続人全員の現在の戸籍謄本などを収集します。
- 法定相続情報一覧図の作成: 収集した戸籍情報に基づき、法務局が定める様式で一覧図を作成します。
- 法務局への申出: 作成した一覧図と収集した戸籍等を、管轄の法務局に提出して申出を行います。申出先は、被相続人の本籍地・最後の住所地、申出人(相続人)の住所地、または相続不動産の所在地を管轄する法務局から、ご自身の都合の良い場所を選べます。郵送での申出も可能です。
専門家からの注記
この制度は非常に強力ですが、利用するためには、最初に全ての戸籍を正確に収集し、法務局の要件を満たす一覧図を作成するという手間はかかります。相続関係が複雑な場合や、ご自身での書類作成に不安がある場合は、司法書士や弁護士が申出を代理することも可能です。当事務所では、この制度の活用を前提とした相続手続きのサポートを積極的に行っております。
相続関係の証明方法の比較
| 手段 | 概要 | 主な利用場面 | メリット | デメリット・注意点 |
| 戸籍謄本一式の提出 | 収集した全ての戸籍謄本の束を各手続先に提出する伝統的な方法。 | 全ての相続手続きの基本。 | ・最も基本的な方法で、どの機関でも通用する。 | ・手続き先ごとに提出と返却が必要で非効率。・紛失リスク。・通数を揃えるのに費用がかかる。 |
| 相続関係説明図の提出 | 相続関係を図にした私文書を作成し、戸籍等と共に提出する方法。 | 主として不動産の相続登記(法務局)。金融機関では参考資料扱い。 | ・法務局で戸籍謄本等の原本還付が容易になる(コピー提出が不要)。 | ・公的な証明力はない。・金融機関等では結局、戸籍原本の提示が必要。・説明図自体は法務局に保管され返却されない。 |
| 法定相続情報証明制度 | 法務局が認証した公的な証明書(一覧図の写し)を利用する方法。 | 不動産登記、預貯金解約、相続税申告など、広範な相続手続き。 | ・これ1枚が戸籍一式の代わりとなる。・複数枚を無料で取得でき、手続きの同時進行が可能。・手続きが大幅に迅速化。 | ・利用には、最初に一度は戸籍一式を収集し、法務局へ申出を行う手間がかかる。・一部、未対応の金融機関等がある可能性も。 |
戸籍収集と相続人調査で行き詰まったら弁護士へ
ご自身で戸籍収集を進めてみたものの、以下のような壁にぶつかることは少なくありません。
- 本籍地が全国に点在していて、手続きが煩雑で進まない
- 取得した古い戸籍の筆文字が達筆すぎて読めない
- 会ったこともない相続人がいることが判明し、どう連絡していいか分からない
- そもそも、平日に役所に行ったり、書類を作成したりする時間がない
ご自身での調査に限界を感じたら、決して無理をせず、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
弁護士は、弁護士法第23条の2に基づく「職務上請求」という法律上の権限を行使し、ご依頼者様の代理人として戸籍謄本等を収集できます。先に解説した
広域交付制度ではご本人しか請求できず、代理人請求が認められていませんが、弁護士にご依頼いただければ、ご依頼者様が役所に足を運ぶことなく、全国に本籍地が散らばる複雑な案件でも、全ての戸籍収集を完遂することが可能です。
葛葉法律事務所では、単なる戸籍収集の代行に留まらず、その後の遺産分割協議の代理交渉、遺産分割調停・審判といった法的手続きまで、相続に関するあらゆる問題を一貫してサポートいたします。
まとめと次のステップ
正確な相続人調査は、すべての相続手続きの土台となる、非常に重要なステップです。最新の制度を上手に活用することで、手続きの負担は軽減できますが、それでも時間と労力がかかる作業であることに変わりはありません。
もし少しでもご不安な点があれば、お一人で悩まずに、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
葛葉法律事務所では、初回相談を無料で承っております。
あなたのお悩みに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。
監修:葛葉法律事務所
