不貞慰謝料請求の原告が陳述書に書くべきこと

目次

陳述書とは

裁判をしていると、証拠として「陳述書」を提出することがあります。
陳述書というのは、事件の経緯等について自分の認識を書面にまとめたものです。

一般的に、陳述書は裁判の終盤に行われる尋問手続の前に提出されることが多いです。
そのため、陳述書を作成するのはある程度裁判が進行してからということになります。

陳述書に書くべきこと

不貞慰謝料請求をする原告として陳述書に記載するべき内容についてご説明します。

①身上経歴

必要かどうかは議論のあるところですが、最初に自分の身上経歴について記載します。
そのような記載は不要であると考える弁護士も多いと思いますが、以前札幌高等裁判所の裁判官が「陳述書では身上経歴を重視している。どういう人物かが分かることによって陳述書の内容の信用性をある程度判断することができるからである」というような趣旨のことを話していたので、当事務所では念のため記載するようにしています。
身上経歴の内容としては、いつどこで生まれた、何人家族で、どこに住んでいた、どういう学歴で、どういうところで働いて、結婚後や子どもが生まれた後はどうしていたか、などです。
ただ、本筋にそこまで影響するとは思われないので、非常に簡潔な記載(長くても1頁以内)で済ませて良いと思います。

②不貞前の婚姻生活

不貞前の円満な婚姻生活を記載することで、そのような婚姻生活が不貞によって破壊されたことを明らかにすることを企図しています。
基本的な内容は、どのようにして知り合って、結婚に至り、どういった結婚生活を送っていたか、などになります。
ここで重要なのは、具体的なエピソードを挙げることです。
エピソードとしては、毎年の季節行事や結婚記念日などの過ごし方、双方の親族との付き合いの様子など、夫婦円満に過ごしていたことが分かる内容が望ましいです。

③不貞発覚の経緯

どのようにして不貞が発覚したかについても記載することが多いです。
重要度としてはそこまで高くはありませんが、場合によっては不貞慰謝料請求の時効にも関係するので注意が必要です。

④不貞後の婚姻生活

不貞が始まってから婚姻生活がどのように変わっていったのかについて記載します。
これは、不貞前の婚姻生活との対比で、不貞によって婚姻生活がどのように変化したか(破壊されたか)を裁判所に知ってもらうため、非常に重要になります。
なお、実際には不貞が始まってから婚姻生活が変わり始め、その後に不貞が発覚してさらに婚姻生活が激変する(別居が始まる等)という経過が多いと思われます。

⑤自分の心身の変化(精神的損害の内容)

④不貞後の婚姻生活の内容と重複する場合もありますが、不貞によって自分の心身にどのような苦痛を受けたのか、つまりどのような精神的損害が発生したかについて記載します。
慰謝料というのは精神的損害が発生したことにより請求するものになります。よって、どのような精神的損害が発生したかは、裁判所が慰謝料の金額を算定するにあたり重要な要素になると考えられます。
もし心療内科等に通院するようになっている場合には、精神的損害が医学的客観的に裏付けられていることになります。そのため、いつから通院するようになったのか、どのような治療をしているのか等について具体的に記載するのが望ましいです。

まとめ

陳述書は無目的に書くのではなくポイントを押さえて作成すること。


この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

目次