相手方の弁護士や裁判所から書類が届いた場合の対処の仕方

離婚や不倫、相続の問題で法的トラブルになったとき、相手方が弁護士に依頼した場合は、一般的にはまず相手方の弁護士から通知書等の書類が届きます。
ここでは、それに対してどのように対処したらよいかについて、弁護士の立場からご説明します。

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相手方の弁護士から書類が届いた場合

離婚請求にしろ不倫慰謝料請求にしろ、基本的には期限が区切られて(例:本書到達後2週間以内など)、それまでに慰謝料の支払いや何らかの回答を求める内容になっていることが一般的です。
相手の請求に応じる応じないにかかわらず、何らかの回答をする場合は、後々その回答内容が証拠として使用される可能性があることに留意する必要があります。
そのため、電話でも文書でも、回答する前に弁護士に相談して回答内容をよくよく吟味するのが望ましいです。

もし期限までに正式な回答が間に合わない場合には、「今弁護士に相談中なので追って回答します」とか「今弁護士を探している段階なので~日までに回答します」などといった一報を相手方の弁護士に入れておくのも有効です。
というもの、もし期限内に何らの回答もない場合には、相手方の弁護士は「回答が無いということは交渉の余地がない」と判断し、訴訟提起や調停申立に移行する可能性があります。

なお、書類は内容証明郵便で届くことが多いですが、内容証明郵便でなかったからといって法的には違いはありません。

裁判所から書類が届いた場合

相手方が訴訟を提起したり調停を申し立てたりすると、裁判所から呼出状などの書類が届きます。
もしその段階で既に弁護士に依頼している場合でも、原則として裁判所から直接自宅宛に届けられます。
これは、裁判の手続上、当事者本人の与り知らないところで裁判が始まっているということがないように、確実に裁判所から当事者本人へ書類が届けられるようにするためです。

裁判所の呼出状には、最初に裁判所で開催される期日(訴訟や調停の第1回期日)の年月日と、その1週間前までに答弁書等を提出されたい、という旨が記載されています。
答弁書等は期限内に提出するのが望ましいですが、もし期限に間に合わなかったとしても期日に出席すればどうにかなります。

訴訟では、答弁書も提出せず期日にも出席しない場合、基本的には原告(相手方)の請求を認める判決が出されます。
したがって、訴訟の場合には無視せず、答弁書を提出し期日にも出席するのが望ましいでしょう。
訴訟にしろ調停にしろ、最初に答弁書等を提出する段階で全体的な裁判の進行を考慮して戦略的に作成するのが望ましいです。

調停では、もともと話合いする気も無いということであれば、何もせずに放置するという戦略もあり得ます。
例えば、離婚を請求されて調停を申し立てられたけれども、そもそも離婚に応じるつもりは無いということであれば、何もせず調停にも行かなければいずれ離婚調停は不成立となって終了するので、相手方の請求が認められることはありません(その後で離婚訴訟を提起される可能性はあります)。
ただし、離婚以外の調停、例えば婚姻費用や遺産分割の調停の場合は、調停不成立になると自動的に審判に移行して裁判所が決定を下すので、それであれば調停の段階から出席して自分の主張をはっきりさせることが望ましいです。

このように、訴訟にしろ調停にしろ、裁判の全体的な進行を見据えた上で、最初の書面の内容をよく考えて作成する必要があります。

まとめ

相手方の弁護士や裁判所から書類が届いた場合は無視しない方が良い。
返答や答弁書等は全体の進行を検討した上で作成するように。


この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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