「弁護士なし」での離婚調停の対応について解説【札幌の離婚に強い弁護士】

目次

離婚調停の基本的な流れと手続のポイント

当事者間で離婚の合意ができない場合、家庭裁判所で調停を行うことになります。
調停とは、家庭裁判所で調停委員(男性1名、女性1名)を介して話し合いを行うという手続です。
調停では調停委員と交互に話し合うので、相手方と会ったり話したりすることはありません。

そうして話合いの結果、離婚の合意ができた場合には、離婚調停が成立し、それにより離婚の効果が発生します。
他方、話し合っても離婚の合意ができない場合には、離婚調停は不成立となります。この場合は、訴訟手続に移行するかどうかを検討することになります。

このように離婚調停は、①あくまで話し合いの手続であること、②当事者間で合意ができなければ離婚は成立しないこと、がポイントとなります。

離婚調停を弁護士なしで行うメリットとデメリット

メリット

弁護士なしで離婚調停を行うメリットは、費用がかからない点が挙げられます。
離婚調停を弁護士に依頼する場合、一般的には着手金として20万~30万円かかります。
そして、事件終了時に報酬として同程度+得られた経済的利益の10~20%程度がかかります。
もし離婚調停で相手方から慰謝料や財産分与として200万円を支払ってもらえるとした場合、弁護士費用として概ね60万~100万円程度はかかる見込みとなります。
弁護士に依頼しなければ、これらの費用はかからないので、経済的には依頼しない方がメリットがあります。

デメリット

弁護士に依頼しないデメリットとして、調停を適切に進行できないリスクがあることが挙げられます。
調停委員は中立の第三者の立場なので、あなたにとって有利になるように助言したりすることはありません。
そのため、あなたは自分でどのようなことを裁判所に主張すべきか、そのために必要な証拠として何を提出するか、さらには調停の期日で調停委員にどのように話を持っていくかなど、調停の進行の全てについて自己責任で行う必要があります。
しかし、離婚の法的知識をその場しのぎで仕入れて進めるのは非常に難しいと言わざるを得ません。
その結果、調停の進行が遅れて解決までの時間が長くなったり、本来であれば獲得できたかもしれない離婚条件を逃してしまったりと、弁護士に依頼した場合よりも経済的損失が大きいという事態にもなりかねません。

弁護士なしで調停をしても大丈夫なケース

あなたが離婚を請求されている側で、離婚に応じるつもりが無いというのであれば、弁護士に依頼する必要はありません。
調停はお互いの合意がなければ成立しないので、あなたは離婚調停を成立させたくなければ、調停で「離婚には応じない」と言い続ければ済みます。
さらに言えば、調停の呼出しにも応じる必要はありません。調停に出席しなければいずれ調停は不成立とされます。

ただし、調停が不成立となった場合、相手方は離婚訴訟を提起してくる可能性があります。
離婚訴訟では、「離婚には応じない」と言い続けても無意味ですし、欠席すると不利になる恐れがあります。
そして、離婚訴訟は弁護士に依頼しないで進めるのは極めて負担が大きいです。
そのため、相手方が離婚訴訟までしてくる可能性が高いのであれば、調停の段階から弁護士に依頼しておいた方が望ましいケースもあります。

弁護士に依頼した方が望ましいケース

弁護士なしで調停をしていると、調停委員から「弁護士に依頼した方が良いのではないか」と言われることがあります。
この場合、調停委員としては、「あなたの話している内容が法的に整理されていないため、あなたの要望が十分に把握できない」ということを暗に指摘している可能性があります。
要するに、このまま個人で調停を進めるとあなたにとって不利な結果になる可能性がありますよ、と教えてくれているのです。
したがって、そのような場合には素直に弁護士に依頼した方が望ましいでしょう。

弁護士に法律相談のみで調停を進めるのは?

弁護士に依頼せず、法律相談を継続して行うことで、離婚調停を進めるというケースがあります。
この場合、弁護士へ依頼するわけではないので、上述したような着手金や報酬はかかりません。
法律相談料は1回につき5000~1万円程度なので(法律事務所によっては無料の場合もあります)、費用をかなり低く抑えることができます。
また、弁護士にまったく相談せずに調停を進めるよりかは、弁護士に相談しながら進めた方が、あなたにとって不利になる恐れがある程度は回避することも期待できます。

とはいえ、弁護士は代理人となって調停に関与しないので、弁護士からすると調停の進行を十分に把握できない状態で法律相談をすることになります。
そのため、弁護士に依頼した場合と比較すると、弁護士から得られるサポートはかなり限定的になります。
また、弁護士によっては継続して法律相談を受けることは対応していない場合もあります。


この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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