離婚裁判の期間と手続のポイント|離婚弁護士の視点から

目次

離婚裁判の基本的な流れ

離婚裁判の手続の基本的な流れについて簡単に説明します。
離婚裁判の流れは、提訴、口頭弁論(弁論準備)、尋問、判決となります。

提訴

提訴は、裁判所に訴状を提出することをいいます。
訴状の他に証拠や添付書類も提出します。添付書類としては、戸籍や離婚調停不成立証明書などがあり、事案によって必要なものが変わります。
提訴をすると、裁判所で訴状等の内容について最低限の審査をします。
審査の結果、不備があれば訂正(補正)するよう指示されます。
審査が通れば、裁判所と原告の間で裁判を行う最初の日を調整した上で、被告宛に訴状等が送付されます。

口頭弁論(弁論準備)

裁判所で裁判の進行を行う日を「期日」といい、期日には口頭弁論と弁論準備の2パターンあります。
口頭弁論は、傍聴人が自由に出入りできる公開の法廷で進められる手続をいいます。
弁論準備は、公開の法廷ではなく裁判所の室内で当事者だけで進められる手続をいいます。
実際の裁判は、1回目の期日は口頭弁論で行い、2回目の期日からは弁論準備で行われることがほとんどです。離婚事件はプライバシー保護の要請が高いという理由によるものと思われます。
口頭弁論や弁論準備は、当事者双方の言い分(主張)や証拠が出し尽くされるまで複数回行われるので、離婚裁判の大部分がこれになります。

尋問

尋問は、原告と被告の尋問や、第三者(証人)の尋問です。
基本的に原告と被告の尋問は行われますが、証人の尋問までは行わないケースが多いです。
尋問が行われるのは裁判の終盤になってからで、基本的に1日で済ませる(全員の尋問を同じ日に行う)ことになります。
尋問が終わると、後は基本的に判決という流れになります。

離婚裁判の期間と平均的な時間

離婚裁判の期間はケースによって異なりますが、平均的な期間(提訴から判決または和解で裁判が終わるまでの期間)は14.1ヶ月(約1年2ヶ月)といわれています。
裁判の期日は大体1ヶ月おきに行われるため、当事者がお互いの主張を明らかにするだけでも優に半年はかかります。

離婚裁判が長期化する原因

離婚裁判が長期化する主な原因は、①収入や財産関係の資料が揃わない、②親権や面会交流で争いがある、の2点です。

①収入や財産関係の資料が揃わないという点について、養育費を算定するには当事者双方の収入に関する資料(源泉徴収票、所得証明書等)が必要です。
しかし、相手に今の収入状況や勤務先を知られたくない等の理由により、この資料を開示しない或いは一部しか開示しないというケースがあります。
そうなると、きちんとした収入資料がないため養育費の算定ができないこととなり、改めて資料開示がなされるまで裁判が伸びる原因となります。

②親権や面会交流で争いがあるという点について、親権や面会交流で争いがある場合、基本的に「調査官調査」というものが実施されます。
この調査官調査は、事前準備を含めると数ヶ月かかることが多いため、これも裁判が長期化する原因となります。

離婚裁判を長期化させない方法

長期化を避けるため、財産分与や親権等を求めず、離婚だけを請求するという方法もあります。
ただ、これは本当に「離婚だけできれば後はどうなっても良い。とにかく早く離婚したい」というようなケースでなければお勧めはできません。
一般的には財産分与や養育費等についてきちんと決めるため、離婚だけ請求することができるというのは限られたケースになります。

離婚裁判の和解と解決の方法

離婚裁判において和解が行われるケースや、和解のメリットや注意点について解説します。

離婚裁判が終了するのは、判決、和解、取下げのいずれかになります。
離婚裁判では、判決までいかずに和解による解決がなされることが多いです。

和解協議に入るタイミングは、弁論準備を重ねて当事者双方の主張が出揃った段階(尋問より少し前)が多く、次に尋問後に行われることが多いです。

和解では裁判所が和解条項を作成し、当事者双方がそれに合意すれば和解が成立します。

和解のメリットとしては、判決とは違う柔軟な解決が可能であることと、控訴をされないため終局的な解決が可能となる(判決では控訴をされると高等裁判所に移行することになる)点があります。

離婚裁判で和解するときの注意点

離婚の和解では、和解成立の期日に当事者が必ず出席することを求められます。
これは他の裁判とは決定的に異なる点です(他の裁判では和解成立は代理人だけの出席で可能です)。

なお、裁判所が遠方のため期日に出席することが難しいというような場合には、「調停に付した上で、調停に代わる審判とする」方法により離婚を成立させることもできます。
ただ、その場合には和解成立とは相違点があるため注意が必要です。

離婚裁判と相談する弁護士の選び方

離婚裁判を行う際には弁護士に依頼することが重要です。
ところで、離婚裁判は「弁護士であれば誰でもできる」と思われがちです。弁護士でもそのように考えて安直に受任することもあると思われます。
ただ、弁護士が離婚裁判に不慣れだと、裁判で主張すべきことを主張せず、主張しなくて良いことを長々と主張するなどして、無為に裁判が長期化する原因にもなります。

とはいえ、相談している弁護士が離婚裁判の経験豊富かどうかはなかなか分かりづらいと思います。
そこでひとつ言えるのは、事件処理の方針や進行、予定などについて具体的な説明ができているかどうかをよく観察することです。
離婚に強い弁護士に依頼するためには、複数の弁護士に相談してみて、それぞれの弁護士がどのような説明をしているか、どのような確認をしてきたか等を比較検討するのが望ましいでしょう。


この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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