裁判報道の見方~ 日本に離婚専門弁護士がいない理由

 ここ最近、ヘンリー王子がメーガン妃と離婚したがっているようなニュースがちらほら目に入りますが、先日こんなニュースを見ました。

『ヘンリー王子が離婚専門の弁護士を雇ったと英報道』
https://news.yahoo.co.jp/articles/984338843eeaceff64a0da3e31bf1794eaeb6440

 ところで、日本には離婚専門の弁護士はいません。
 より正確に言えば、たぶんいないでしょうし、公式的にもいないことになっています。

 どういうことかというと、日本弁護士連合会が定めた「弁護士等の業務広告に関する規程」というものがあり、その規程の運用に関する「業務広告に関する指針」というものがあります。
 その指針の中で、「専門分野」という表現は「表示を控えるのが望ましい」とされているのです。
 理由としては、何を基準として専門分野と認めるのかの判定が困難であり、客観性が担保されず、誤導の恐れがあるから、とされています。
 これにより、「専門分野」という表現を用いると最悪懲戒のリスクがある、と弁護士は思ってしまいます。
 実際、恐らく「離婚専門」などとホームページに掲載すると、所属弁護士会から指導が飛んでくると予想されます。
 これが、日本には公式的には離婚専門弁護士がいないという理由です。

 ちなみに、上記指針によれば、「得意分野」という表現であれば主観的評価に過ぎないと認められるため規程に違反しない、とされています。
 しかし、個人的には「専門分野」も「得意分野」もニュアンスとしてあまり変わらないように思います。
 そのためか、実際に「得意分野」という表現はあまり見かけず、代わりに「~に強い弁護士」という表現を多く見かけます。懲戒リスクを可能な限り避けようということでしょうか。あ、当事務所でもそうしています。

この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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