養育費はいつまでとするのが正解?|養育費の終期の取り決め方

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養育費の終期の定め方

養育費をいつまで支払うのか、というのもよく問題となります。
この養育費の最後の支払時期を「養育費の終期」といいます。

養育費の取り決めは調停や公正証書ですることが多いです。
なぜ調停や公正証書で取り決めるのかというと、養育費の不払いが生じたときに差押えなどの強制執行が可能になるからです。
そして、強制執行をするには、強制執行が可能となる要件を充たしていることが一義的に明確である必要があります。

例えば、以前は養育費の終期について「大学に進学した場合は大学卒業まで」などと定めることもありました。
しかし、そのような定め方では、浪人するとどうなるのか、留年するとどうなるのか、一度退学した後に再び進学するとどうなるのかなど、養育費の支払いがいつまで続くのか不明な事態が起こり得ます。
そうすると、いざ大学進学後に養育費が払われなくなって強制執行しようにも、養育費の終期が一義的に明確でなく曖昧であるとされ、強制執行ができない恐れがあります。
そのため、今では「大学に進学した場合は大学卒業まで」のような取り決めは基本的に避けられるようになりました。

養育費の終期は具体的な年月で定めるべし

それではどういう風に取り決めるかというと、具体的な年月を特定するという方法が一般的です。

例えば、4年制の大学進学を想定して決めるのであれば、「22歳の3月まで」と定めることになります。
この場合、仮に浪人や留年等により大学の卒業時期が遅れると、22歳の3月以降の養育費については別途協議等をして取り決める必要があります。、
他方、仮に4年制の大学に進学しなかったとしても、養育費の終期は基本的に22歳の3月までで変わりはありません。ただ、もし子が稼働して収入を得るようになった場合には、別途協議等をして養育費の支払いを終わらせる必要があります。

要するに、一度取り決めをした時期からずれた場合でも養育費の終期は変わらないため、終期を変えるには別途協議等をする必要があるということになります。
ただ、養育費の終期が一義的に明確であるため、強制執行するには問題ないわけです。

新しい成人年齢後の養育費の終期

これまで養育費の取り決めでは「成人に達する月まで」とすることが多くありました。
ところで、2022年4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げになりました。
これにより、養育費の終期に影響があるのかが問題となります。

まず、2022年4月1日以前に「成人まで」と取り決めをしていた場合ですが、このようなケースでは2022年4月1日以降も終期は満18歳までではなく満20歳までと解されます。
というのも、取り決めをした時点で成人=満20歳だったので、満20歳までとするのが当事者の合理的な意思であるとみなされるためです。

また、2022年4月1日以降、養育費の終期を成人まですなわち満18歳までと取り決めることが多くなるのでしょうか。
この点については、成人年齢が18歳に引き下げられたからといって従前の社会情勢等がすぐに変化するわけではないので、基本的には養育費の終期も従来通り満20歳までとし、満18歳までに引き下げることはないと考えられています。

(以上について、司法研修所編・法曹会「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」参照)

まとめ

養育費の終期は明確な年月で定める。
(「大学卒業まで」ではなく「〇〇年〇月まで」とする)
現在も養育費の終期は「満20歳に達する月まで」とすることが多い。
4年制の大学卒業までを想定するなら「22歳の3月まで」とする。


この記事の執筆者

東京・大阪の二大都市で勤務弁護士の経験を積んだ後、
2008年から実務修習地の札幌で葛葉法律事務所を開設。
相続、離婚、交通事故、会社間の訴訟の取扱いが多め。
弁護士歴約20年。

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